2007 Fiscal Year Annual Research Report
技術哲学の新歴史主義的研究 -カッシーラー・三木・ハイデッガーの1930年代-
Project/Area Number |
19520085
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Research Institution | Tsuyama National College of Technology |
Principal Investigator |
稲田 知己 Tsuyama National College of Technology, 一般科目, 教授 (70221778)
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Keywords | 技術 / 技術の哲学 / 工学倫理 |
Research Abstract |
本研究の目的は、1930年代にそれぞれ独自の仕方で卓抜な技術論を唱えたことでしられるカッシーラーや三木清やハイデッガーを主題的に取り上げることによって、「技術哲学」の新たな可能性を「新歴史主義」的に究明することである。いいかえれば、今では忘却されてしまった歴史のスクラップを丹念に渉猟し、それらを参照軸としつつ、カッシーラー・三木・ハイデッガーの技術哲学の特質をその時代的背景から浮かび上がらせること、これが本研究のめざすところである。 そこで、このような研究を着実に遂行するために、まず平成19年度になされたのは、研究主題となる上記3人の哲学者が「技術の哲学」について実際にどのようなことを述べていたのか、比較思想的に解明することであった。こうした趣旨で執筆されたのが、論文「技術哲学の可能性-カッシーラー・三木・ハイデッガー-」である。ここで主として論及されたのは、カッシーラーの「形式と技術」、三木清の『技術哲学』、ハイデッガーの『エルンスト・ユンガーについて』(全集第90巻)などである。これらの著作に依拠しつつ3者それぞれの技術把握の共通点と相違点を照らしだすことによって、現代の工学倫理の論議にとっても意義深い「技術哲学の可能性」を見いだすことが、この論文でこころみられたことだった。つまり、平成19年度の研究実績は、本研究全体の哲学的核心を先行的に把握する作業であったといってよい。こうした中心主題への見通しを立てたうえで、今後の本研究は、もろもろの周縁的テクストの読解へと。ひいては、技術によって特徴づけられた歴史という巨大な物語テクストの読解へと向かうことになるだろう。
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Research Products
(1 results)