2008 Fiscal Year Annual Research Report
ヴィア・ラティーナ・カタコンベ壁画に関する包括的研究
Project/Area Number |
19520087
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Research Institution | Hirosaki University |
Principal Investigator |
宮坂 朋 Hirosaki University, 人文学部, 准教授 (80271790)
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Keywords | カタコンベ / ローマ絵画 / 初期キリスト教 / 図像学 |
Research Abstract |
平成20年度においては、紀元後4世紀のローマの地下墓所ヴィア・ラティーナ・カタコンベの壁画の最も特殊な特徴である墓室Fに描かれた「半開の扉」の様式分析と図像解釈について、論文を発表した(「半開の扉-ヴィア・ラティーナ・カタコンベ墓室F壁画図像解釈-」『美術史』第166号、pp.397-410.)。これは、半開扉図像は象徴的であり、外開きに表現された扉が「勝利」の意味を含んでいることを文献と比較作例から指摘した。それに対し、内開きの場合であるヴィア・ラティーナ・カタコンベ墓室Fの半開扉は、むしろ再現的であって、人の出入りの多い普通の住宅のように表現されており、階段が、あたかも自然に上って行けるように床面直上に描かれている点も含めて4世紀の作品としては珍しい。また実際に階段を上って行く人物や扉の後ろで待ち受ける人物、扉から外へ出て行こうとする人物が描かれていて、無人の扉とは異なる。ここには「永遠の家(墓)」に入って行く死者や懐かしい出会いのある、楽しい場所としての死が表現されている。また、墓室壁画における建築再現図像に関して、2008年12月16日パレルモ大学において、考古学特別講義'Sulla pittura funerale del TJ04 nella Necropoli di Ramali, Tiro, Libano(イタリア語)'を行い、研究の成果を発表した。 その他に、ローマ市郊外のラティーナ街道の地誌学的研究関係資料収集と実地調査、(2)ヴィア・ラティーナ・カタコンベ出土の墓碑に関する資料収集、(3)墓地の発注者と考えられる古代末期のローマの元老院階級の宗教事情についての文献収集、(4)絵画の図像的源泉としてのローマ時代の石棺浮き彫りおよび床モザイクについて文献調査と資料収集、(4)ヘラクレス図像に関する資料収集を行った。
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