2007 Fiscal Year Annual Research Report
映画を媒介とした消費と教育の史的関係-戦前期日本を中心に
Project/Area Number |
19520099
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
藤木 秀朗 Nagoya University, 文学研究科, 准教授 (90311711)
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Keywords | 芸術諸学 / 映画 / 近・現代史 / 教育史 / 日本史 / 消費文化 / メディア / 視覚文化 |
Research Abstract |
ゲント大学(ベルギー)とジャミア・ミリア・イスラミア大学(インド)での学会において、異なる聴衆に対して、ほぼ同じ内容の発表を試み反応をうかがった。内容は、天皇制下で資本主義が著しく興隆した1910年代から1920年代にかけての日本で、「民衆」という概念が、実際の映画観客、当時の文部省・内務省の政策、そして「民衆娯楽」を提唱した権田保之助、大林宗嗣、橘高広などの知識人の言論との関係でどのように定義されたかを分析し、「民衆」という概念が実際の観客を忠実に言い表すものというよりも、創造されたものだということを主張するものだった。残念ながら、ベルギーではあまり反応がなかったが、インドでは同じような動向をインドのコンテクストで指摘する研究者がいて、民衆をめぐる近代性の問題を国際的な視野で考えることの重要性を改めて痛感した。著書『増殖するペルソナ--映画スターダムと日本近代』は、平成16〜19年度にかけての科研費のプロジェクト「メディア的リアリティの形成」の成果ではあるが、初期的な段階の成果とは言え、映画にかかわる教育と消費の問題を主要テーマにした本科研費プロジェクトの成果も盛り込まれている。また、消費文化の問題に関しては、平成19年3月にボストンで開かれたアジア研究学会(AAS)で発表した「映画広告と新しい視覚経験の形成」をもとにして調査分析をさらに進め、その成果をまとめた論文を平成20年4月に英国の日本研究学術雑誌Japan Forumに投稿し、現在査読を受けている段階にあることを付け加えておきたい。
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Research Products
(3 results)