2008 Fiscal Year Annual Research Report
東南アジア近代美術の形成に果たした日本の役割凋戦中期を中心に
Project/Area Number |
19520102
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
後小路 雅弘 Kyushu University, 大学院・人文科学研究院, 教授 (50359931)
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Keywords | 美術史 / 日本軍政 / インドシナ美術学校 / 仏印現代美術展日本巡回 / 昭南神社 |
Research Abstract |
東南アジア近代美術の形成と展開に日本が果たした役割について、とくに「大東亜」戦争における占領地において日本軍政が行った美術「交流」が果たした役割について検証するため、シンガポールとベトナムにおいて現地調査を行い、資料を収集し、関係者へのインタビューを行った。ベトナム・ハノイでは、昭和18年に日本に招かれた3人のベトナム人画家にとっての日本の影響を探るため、遺族に会ってインタビューを行った。とくにそのうちのひとりルオン・スアン・ニーの遺族所有の絵画、手紙、写真等を撮影することができた。また日本国内においてもベトナム(フランス領インドシナ)関係の交流資料を多数収集した。ベトナムと日本の戦時における美術交流については、その全体像を解明する手がかりを得ることができた。 シンガポールでは、日本軍によって中心的なメンバーたちが殺され壊滅的な打撃を受けた「華人美術研究会」について昨年度に続いて補足的な調査を行った。また、同研究会を主導した張汝器の遺作の所在を調査し、関係者をインタビューし、日本軍による「大粛正」によって殺された画家の最後の様子などを知ることができた。 さらに台湾において、植民地美術行政の一環としての公的建築物における壁画など「公」の美術について旧台湾総督府の関連資料を収集し、占領地の公的美術を考察する上での比較材料とした。 なお、シンガポール美術館が「ポスト・ドイモイーベトナム現代美術展」の開催に伴い企画実施した「ベトナムの近現代美術シンポジウム」において、昭和16年に仏領インドシナを巡回した「日本現代美術展」と昭和18年に日本各地を巡回した「仏印現代美術展」について発表し、研究者と交流し、情報交換をすることができた。 こうした調査を通して、日本による東南アジア占領が果たした近代美術形成に対する役割の検証に関する基礎的な資料やデータを収集することができた。
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