2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19520117
|
Research Institution | Kyoto University of Art and Design |
Principal Investigator |
菅原 真弓 Kyoto University of Art and Design, 芸術学部, 准教授 (10449556)
|
Keywords | 美術史 / 日本 / 版画 / 浮世絵 / 19世紀 |
Research Abstract |
平成21年度は、これまでの作品調査、文献調査を基とした研究成果の公表に力を入れた。 具体的には、20年度までに調査を行い、特に注目すべき事柄として提起できる、歌川広重の遺した『スケッチ帖』(大英博物館蔵)の問題を、美術史学会西支部例会において発表した。また、これまでの研究および学位申請論文をまとめた著書『浮世絵版画の十九世紀-風景の時間、歴史の空間』(ブリュッケ)を、昨年11月に刊行した。 この内、歌川広重『スケッチ帖』の調査および周辺調査から明らかになった事を記す。従来この素描集については、その存在は知られてはいたものの、位置づけなどの研究は進んでおらず、成立年代は嘉永元年(1848)、その目的は嘉永5年(1852)年刊行の版本『岐蘇名所図会』のための取材、とされてきた。しかしこの『スケッチ帖』と、同じく広重の錦絵シリーズ「木曽海道六拾九次」の各図を比較することで、この素描集が「木曽海道六拾九次」制作の取材として、天保10年(1839)を前後する時期に中山道を広重が旅をし、描きとどめられたものであったことが判明した。そしてその結果、これまで広重が江戸以外の土地を旅した上限の時期とされてきた天保12年を、2年遡る結果となり、この絵師の伝記事項に新たな記述を加えることが出来た。この成果は、上述のように美術史学会での口頭発表を行なった他、やはり上掲の著書の第二章として論文発表をした。
|