2008 Fiscal Year Annual Research Report
境界における東アジア文化の受容と継承-松浦・平戸地方の中国・朝鮮・日本の美術作品
Project/Area Number |
19520121
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Research Institution | Sojo University |
Principal Investigator |
中西 真美子 Sojo University, 芸術学部, 講師 (60331071)
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Keywords | 松浦 / 平戸 / 佐世保 / 仏教美術 / 仏像 / 松浦氏 / 渡来仏 |
Research Abstract |
日本の最西端に位置する松浦・平戸地方は、古代から近世に至るまで常に東アジアに向かう交通の要衝地であり続け、海上交通を駆使した国内外との交渉・交易を通じて古くから日本の政治的中心地とも強いかかわりを保ち続けた。本研究は、松浦・平戸地方を中心として文化財調査を行い、ことに美術作品を通して東アジアの境界における文化の受容と継承の様相をあきらかにしようとするものである。昨年度から引き続き現地調査を行い、本年度は平戸地方に所在する寺院を中心に一部佐世保市内の寺院を含め、特に仏教美術の資料収集と撮影を行った。その結果、平戸市内では、日本の平安時代後期に制作されたと推定される金銅仏や木彫仏、鎌倉時代末〜南北朝時代作と思われる懸仏尊像、鎌倉〜南北朝時代作と推定される仏画、平戸藩主松浦氏の関わった江戸時代の在銘像、江戸時代作と考えられる刺繍仏画、中国・明〜清時代作と考えられる金銅仏や高麗時代の制作と推察される金銅仏などの美術作品の存在が確認された。その多彩な状況は、国内外との活発で継続的な交流が行われてきたという当地方の地域的な特性を示すものであり、豊かな仏教文化の存在を物語る。また、松浦党の流れを汲み当地方で領主として活躍した松浦氏に関わる寺院調査を通して、桃山時代〜江戸時代の松浦氏の信仰や造像・修復の状況の一端も浮かび上がった。2年間の当地方での現地調査では、全地域の美術作品をくまなく網羅することはかなわなかったが、調査を通して当地方を特徴づける未確認の文化財がなお数多く残されている可能性の高いことを確信するに至った。今後、文化財調査を継続することにより新たな資料を加え、当地方の様相をなお一層明らかにすることを期したい。
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