2008 Fiscal Year Annual Research Report
懸仏の製作技法に関する基礎的研究-自然科学的手法を用いた歴史研究の試み-
Project/Area Number |
19520127
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Research Institution | Gangoji Research Institute of Archaeology, Cultural Anthropology, and Conservation Science |
Principal Investigator |
日高 里佳 (石井 里佳) Gangoji Research Institute of Archaeology, Cultural Anthropology, and Conservation Science, 研究部, 研究員 (30250351)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
川本 耕三 財団法人元興寺文化財研究所, 研究部, 研究員 (10241267)
高橋 平明 財団法人元興寺文化財研究所, 研究部, 研究員 (60261210)
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Keywords | 仏教美術 / 民俗学 / 蛍光X線分析 / 鋳造品 / 銅製品 / 保存科学 / 庶民信仰 / 神仏習合 |
Research Abstract |
本研究は、岐阜県那比新宮神社所蔵懸仏の形態観察と蛍光X線による元素分析を行い、その結果及び周辺史料から懸仏の変遷を追うものであり、人文科学的な側面と自然科学的な側面から懸仏の製作技術を明らかにするものである。分析方法としては蛍光X線分析装置を用いた。肉眼観察から、分析項目として表面の鍍金の状態、彩色顔料の同定、銅を初めとする金属同定などが考えられたためである。 また、懸仏の多くは量産型とも言うべき小型品であり、これらの形態観察を行うことにより、製作技法の変遷傾向がわかると考えられたため、形態分類を行った。那比新宮神社懸仏のうち8面には銘文が残っており、これと同神社に伝わる大般若経の奥書から信仰の変遷を伺うことができた。それによると3期に分けることができる。これは懸仏の形態分類にも当てはめることができ、本尊の前立てとしての懸仏、仏教との結縁の具現化としての懸仏、現世利益願うものとして懸仏に分類することができる。 また、形態のみではなく、懸仏の鏡面の元素分析からも3期に分類することができると考えられる。昨年度同様、過般型蛍光X線分析装置を那比新宮神社に持ちこみ、懸仏の鏡面を中心に測定を行った。 さらに、那比新宮神社のほかに、大分県日田市老松天満社、長崎県上対馬市霹靂神社などに多数の伝世懸仏があることを確認し、調査を行なった。これらの懸仏には、那比新宮神社の懸仏と近似の特徴を持つものもあった。
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