2007 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19520138
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
長島 弘明 The University of Tokyo, 大学院・人文社会系研究科, 教授 (00138182)
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Keywords | 初期読本 / 都賀庭鐘 / 建部綾足 / 上田秋成 / 国学 |
Research Abstract |
1.初期読本の作家の中核となる都賀庭鐘・建部綾足・上田秋成に関しては、次の成果を得た。 (1)庭鐘については、読書ノート『過目抄』に記された漢籍を舶載書目類と照合しつつ、庭鐘の極めて広範な読書実態を確認するとともに、読本執筆の前提になる教養基盤の一端を明らかにすることができた。 (2)綾足については、密画から俳画にいたる全絵画について、現存の作品の写真撮影と過去の売り立て目録に収載される写真の収集を進めた。その過程で、従来知られていなかった作品を数点見いだすことができた。染筆年次の推定は、密画については困難をきわめるが、俳画については讃句の成立年次等を手がかりに、大部分の作品について年代をほぼ絞り込むことができた。 (3)秋成については歌文稿の全集未載の異文を中心に調査・収集を進め、そのうち『海道狂歌合』「富士山説」等のいくつかについて諸稿の成立順を明らかにすることができた。 2.初期読本に与えた上方学芸の伝統の影響については、特に秋成と関係のある京都の国学者(秋成の門人を含む)の業績を調査し、橋本経亮・松本柳斎・釈昇道らの著述を検討して、秋成や彼らが特に『日本書紀』解読や西行の和歌に独特の関心を持っていたことを明らかにした。また、大阪の懐徳堂の国学研究について検討し、特に秋成に影響を与えた五井蘭洲の源氏学の特色を、『源語梯』等から明らかにした。 3.初期読本成立の背景の一つとして『古状揃』に着目し、その諸版の整理を進めるとともに、「腰越状」「義経含状」などの義経関係の創作的書簡が、正史の空白を小説的な興味によって埋めるという、初期読本と共通の特質を持っていることを明らかにした。
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