2007 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19520144
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
西村 聡 Kanazawa University, 文学部, 教授 (00131269)
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Keywords | 能楽 / 現代 / 地方 / 雑誌 / 謡曲 / 舞台 / 無形文化遺産 / 加賀宝生 |
Research Abstract |
戦後間もない頃に刊行された能楽雑誌,『能』の記事及び番組情報欄の記載を基に,番組による戦後能楽史年表を作成した。昭和22年〜26年分を研究成果報告書に掲載する。この年表により,戦後の能楽復興が全国各地でどのように進行したかが明確に把握されるようになった。各地の能楽堂、能舞台の多くが戦災で消失し,たとえば東京での催しは,染井能楽堂や多摩川能楽堂など数カ所に集中していたが,水道橋の宝生能楽堂など流儀の舞台が急速に再建されるさまが見て取れるし,地方では名古屋のように商工会議所や松坂屋ホールでの特設舞台しのぐ時期が長く続くこと,京都、大阪の盛況ぶり,学校の教室、講堂や神社仏閣を利用した大衆化の地方拡散の傾向も顕著である。時間や紙幅の制約で脇方、囃子方の名前までは記載できなかったが,そういう情報も加えることで,次年度以降,分析の精度をさらに上げたい。この作業によってわずか数年の期間でも,能楽界の状況は劇的に変化することが実感された。大きな時代の変化を追うことも必要だが,10年も経過すれば能楽師の顔触れは相当変わり,舞台も老朽化が進む一方,新たな中核施設が出現する。本年度にその沿革を調査した,とくに横浜能楽堂や宮越記念久良岐能舞台は,建設地を移転しながら再生する事例として注目に値する。全国の自治体史に見られる能楽記事の収集結果とつき合わせる視点が得られたと考えている。地方展開の事例としては,「シンポジウム:金沢が育んだ加賀宝生の魅カ-無形文化遺産の継承を考える-」の中で,昭和25年に行われた金沢市による「加賀宝生」の記念文化財指定を,加賀宝生の伝統と戦後能楽史の状況の縦横に交差する顕著な事象として分析した。本研究のまとめとして位置づけることができる。
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Research Products
(4 results)