2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19520149
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
高橋 亨 Nagoya University, 文学研究科, 教授 (10093048)
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Keywords | 物語絵 / 和歌 / 源氏物語 / 狭衣物語 / 詞書 / 源氏神話 |
Research Abstract |
王朝物語の絵と和歌の関連について、本年度は、江戸時代前期を主とする『狭衣物語』および『源氏物語』の絵画資料の調査と収集の成果をふまえて、総合的な展望を得た。平安朝の物語絵においては、作中の和歌を中心とした場面の絵画化が多い。特に『源氏物語』においては、各巻の一場面を絵画化することが多く、巻名となった歌などの絵画化が典型的である。詞書を伴った色紙絵においては、その詞書に和歌のみを記す例が多くみられ、物語文を記す場合にも、和歌を含むことが多い。『源氏物語』など平安朝の物語の享受が、和歌を中心としてなされていたことが、端的に示されている。 他方で、江戸時代前期には、絵入り版本も出版され、それらに基づいた物語絵も多く残されていることが判明した。そこでは、同時代の和歌および連歌などの創作と結合した注釈書との関連も強くみられる。「源氏絵」など物語絵のうち、土佐派や住吉派、狩野派などの専門絵師による作品は類型化しているが、注文主などとの関連により、微妙な差異をもつことも具体的に考察することができた。 現存作品の詞書筆者には皇族や公家が多く、武家の注文主の側からの「源氏神話」というべきものとの結合も、個別作品の具体的な分析の総合的な考察により解明された成果である。それらとは異なったものとして、江戸時代には、いわば王朝文化の大衆化の現象もみちれ、町絵師や浮世絵師による作品では、見立てやパロディによる独自な展開をも示している。そうした多様性を考察するために、特に海外に流出した作品の調査が必要かつ有効であり、新資料の発掘が今後も期待できることを確かめたことも成果であったといえる。
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