2009 Fiscal Year Annual Research Report
日本近代文学館所蔵芥川龍之介文庫和漢書の書き込みに関する文献学的研究
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19520151
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
須田 千里 Kyoto University, 大学院・人間・環境学研究科, 教授 (60216471)
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Keywords | 芥川龍之介 / 和漢書 / 日本近代文学館 / 書き込み / 文献学 / 『旧小説』 / 『芭蕉全集』 / 『蘇文忠公詩集択粋』 |
Research Abstract |
本年度は、芥川龍之介文庫和漢書四六五点のうち、未調査だった『頼山陽の家庭』以下六十七点の書き込み調査を完了した。これで全点の調査を完了したことになる。以上の調査に基づいて、主な書き込みの紹介と、それに関する考察を行い、論文二点を発表した(下記11.参照)。まず、論文「芥川龍之介文庫和漢書の書き込みについて」では、芥川が読了日を記した『虞初新志』以下八点を紹介し、『改正 新編漢文教科書』『虞初新志』『浙西六家詩鈔』『唐詩絶句』『蘇文忠公詩集択粋』『精刊唐宋千家聯珠詩格』『旧小説』『青邸高季迪先生絶句集』『絵図情史』『樊川詩集』『芭蕉全集』『平田篤胤之哲学』『甌北詩選』『寒山詩闡提記聞』の十四点について、書き込みを翻刻紹介した(特に『虞初新志』 『浙西六家詩鈔』『蘇文忠公詩集択粋』の書き込みは多い)。さらに、『春服』訂正版の実態を具体的に明らかにし、芥川の記したと思われる圏点などの符号や、芥川への献呈本に記された他作家の献辞についても具体的に紹介し、考察を施した。その他、『旧小説』所収『簷曝雑記』「独秀山黒猿」が、『文芸雑話 饒舌』で芥川が紹介する「通臂猿」の話の出所であることを明らかにした。論文「芥川旧蔵『芭蕉全集』と「芭蕉雑記」」では、『芭蕉全集』(大正十年)の「連句集」「遺語集」に見られる○印やカギカッコ、傍線などを紹介し、これらは、芥川が「芭蕉雑記」 (大正十二~十三年)「続芭蕉雑記」(昭和二年)執筆に当たって参照し、作品中に引用するための心覚えの印であることを具体的に跡づけた。以上の書き込みが、芥川文庫和漢書の主なものである。
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