2009 Fiscal Year Annual Research Report
日本における茶文化形成過程に関する研究-栄西・明恵の再評価と闘茶の検討-
Project/Area Number |
19520153
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
米田 真理子 Osaka University, 文学研究科, 特任研究員 (00423210)
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Keywords | 国文学 / 仏教学 / 文学一般 / 栄西 / 茶文化 |
Research Abstract |
本研究は、日本における茶文化の形成を文献資料に基づき明らかにすることを目的とした。本年度の第一の目標であった、栄西と明恵の茶に関わる事蹟の解明に関しては、まず栄西の『喫茶養生記』へと繋がる密教思想について、その形成期というべき九州時代全般を覆う真福寺蔵『改偏教主決』『重修教主決』の翻刻紹介および資料の位置付けを行った。また、茶祖伝承の生成と展開については、『明恵上人伝記』を基に明らかにした。これらから得られた視点によって、茶文化の通史は読み替えられたと考える。 次に、第二の目標とした、茶書と文学の関係の解明については、室町以降特に好まれた『徒然草』82段を中心に、『徒然草』の時代の背景の解明と近世に至る享受の在り方について考察を行った。『徒然草』が近世の茶書へ影響したことは既に指摘があるが、『徒然草』が室町中期以降徐々に定着していく具体的な過程は明確ではなく、本研究によって中世の美的意識と関わる章段の享受の一端が明らかになった。 かかる研究を進める中で、新しい問題点が明確化した。それは、室町以降の文化の基盤となる禅の思想が、中世の前期以来どのように展開したかを問い直すことである。その新たな目標に向けてすでに研究を継続しているが、そのような現況をふまえつつ、今後の研究の展開に関する計画を述べたい。まず、本研究の基礎的な目標であった「日本中世の茶文化の形成過程の解明」については、栄西と明恵の活動を視野に入れ、著書としてまとめる予定である。また、本課題から導き出された栄西の宗教・文化的活動の解明という新たな研究目標に向けて、栄西の著作の紹介・解題を企画し、平成22年度内の刊行を目指す。『喫茶養生記』の思想形成に関わって、寺院資料の調査を開始し、研究会を組織することを予定する。栄西の活動基盤の一つであった九州北部地域の文化形成について、考古学・歴史学・仏教学の分野と連携を深め、調査・研究を進めることを計画している。
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Research Products
(4 results)