2009 Fiscal Year Annual Research Report
『長珊聞書』を中心とする中世の源氏物語古注釈の研究
Project/Area Number |
19520169
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
陣野 英則 Waseda University, 文学学術院, 教授 (40339627)
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Keywords | 源氏物語 / 古注釈 / 長珊聞書 / 伊勢物語 / 古今和歌集 / 引用 / 和歌的表現 |
Research Abstract |
本研究の目的の1つ、未翻刻の源氏物語古注釈書『長珊聞書』(陽明文庫蔵、全53冊)の翻刻等については、今年度も作業を進めてきたが、年度内に全4分冊となる予定のうちの第1分冊の刊行までこぎつけることはできなかった。次年度には必ず第1分冊を刊行させるとともに、第2分冊以降に相当する部分の翻刻作業も進めてゆきたい。 本研究の目的の2つめは、一条兼良から宗祇、牡丹花肖柏、三条西実隆らへといたる室町時代の源氏物語古注釈の展開に関する新たな視座からの調査・考察である。これについては、特に私自身が編集で関わっている『平安文学の古注釈と受容』第二集において、斯学の中堅もしくは新進として活躍中の方々の論考及び資料翻刻・紹介などの掲載を実現するとともに、拙論「古注釈の示唆する『源氏物語』の和歌的表現-式部卿宮の大北の方による「ののしり」の言葉をめぐって-」においては、特に中世の古注釈によって示唆される、『源氏物語』の和歌的表現の拡がりなどについて、新たな視角から考察した。 一方、新たな展開として、江戸時代の『源氏物語』享受についても調査を開始している。具体的には、早稲田大学古注の会のメンバーとともに、早稲田大学図書館蔵の『源氏物語注』と題された未紹介の写本(1冊)の翻刻と検討に取り組みはじめた。この注釈書は、契沖『源註拾遺』及び賀茂真淵『源氏物語新釈』の注記を適宜取り込んでいる。また、實淵門下の加藤美樹による『雨夜物語だみことば』と照らし合わせてみると、『だみことば』に引かれている『源氏物語新釈』の注記との一致度が高いように見受けられる。今後、調査を重ねてゆき、いずれは翻刻ならびに資料紹介を果たしたいと考えている。 また上記の研究活動に加え、本研究に関連する仕事として、他に『源氏物語』関係の論考5篇をまとめている。いずれも、適宜古注釈を参照または引用しながら論じている。
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Research Products
(8 results)