2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19520170
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
中島 国彦 Waseda University, 文学学術院, 教授 (00063785)
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Keywords | 日本近代文学 / 日本美術史 / 比較文学 / 美学 |
Research Abstract |
平成19年度に引き続き、近代文学に描かれた「風景表象」の位相を分析しつつ、個個の事例を近代の精神史の-環として体系づける事を試みた。事例としては、昨年度の島崎藤村に続き、松原岩五郎・夏目漱石・永井荷風・水野葉舟などの作家の営為を資料的に分析、跡づけ、近代全体の体系の中に位置付ける試みを継続した。まだ、個個の文学者単位で論文化しただけで、総体的な精神史的記述は準備中だが、核になる文学者についてはかなり見通しが出来てきており、数年後の著書刊行に向けて更に研鑽を続けたい。 今年度、特に研究を深めた点は、以下の通りである。 (1)松原岩五郎の東京風景の表象明治の東京の貧民窟を記録した『最暗黒の東京』は、都市の「風景表象」の特異な事例である。数年がかりで、この作品に詳細な注釈を加え、論じた。 (2)永井荷風の描く都市表象東京の「風景表象」を考える時、『日和下駄』に代表される荷風の作品は落せない。その成立の経緯を丹念に分析して、論文化した。 (3)夏目漱石の描く風景漱石と自然風景の関係を『思ひ出す事など』を通して考え、そこに込められた視点や、読書体験を分析した。口頭発表がすんでおり、間もなく論文化したいと考えている。 (4)水野葉舟の描く印旛沼東京郊外の自然描写として、葉舟のえがく印旛沼の風景を、実地踏査を通して意味付けた。近く論文化したい。 (5)風景表象の諸問題の追求大学院の講義科目「比較文学」、学部の講義科目「近代の文学と文化」、鎌倉漱石の会などで、一年間の研鑽の成果を講義・講演した。
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