2008 Fiscal Year Annual Research Report
中国の伝奇小説と日本の物語文学に関する比較文化的研究
Project/Area Number |
19520175
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Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
山本 登朗 Kansai University, 文学部, 教授 (40210538)
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Keywords | 伝奇小説 / 物語文学 / 比較文化 / 国文学 / 中国文学 / 伊勢物語 / 遊仙窟 |
Research Abstract |
平安時代の日本に『伊勢物語』のような歌物語が出現し、それが『源氏物語』などに発展していったことが、ほぼ同時代の中国の伝奇小説とどのような関わりを持っていたかについて、前年度に引き続き具体的かつ総合的に考察することが、本年度の研究のひとつの目的だったが、それに関連して、平成20年9月3日に台湾大学で行われた「和漢比較文学会台湾特別研究発表会」において「『伊勢物語』初冠考」と題する口頭発表を行った。同発表では、従来日本古来の成人儀礼と結びつけて考えられてきた『伊勢物語』初段の主人公の「初冠」すなわち元服について、それが奈良時代から平安時代初頭にかけて次第に普及した中国伝来の、むしろ新しい儀礼であることを指摘し、さらに、元服直後の主人公が登場する伝奇小説『歩飛烟』が『伊勢物語』初段の成立に大きな影響を与えた可能性があることを述べた。その内容は、再考を経たうえで、平成21年度中に文章化して発表したいと考えている。 『遊仙窟』が平安時代文学に与えた影響については、『王朝文学と東アジアの宮廷文学』『伊勢物語虚構の成立』の2冊の論集に、それぞれの論点から具体的な考察を発表することができた。 また、物語・伝奇の絵画を含めた享受の有様を比較することも課題のひとつだったが、平成20年8月30日に慶應義塾大学中之島キャンパスで行われた「奈良絵本・絵巻国際会議大阪大会」で「伊勢物語の絵巻・絵本と絵入り版本」と題する講演を行った。これは、『伊勢物語』の中世の絵巻・絵本から江戸時代の絵入り版本への図柄の連続性を確認して、今後の『伊勢物語』享受史研究の方向性を示したものであり、日中比較研究を展開するための基礎研究のひとつでもある。
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