2007 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19520177
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Research Institution | Konan University |
Principal Investigator |
廣川 晶輝 Konan University, 文学部, 准教授 (40312326)
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Keywords | 万葉集 / 菟原娘子伝説 / 墓 / 伝説 / 高橋虫麻呂 / 田辺福麻呂 / 大伴家持 |
Research Abstract |
日本文学上の「菟原娘子伝説」には、○『万葉集』(高橋虫麻呂歌・田辺福麻呂歌・大伴家持歌の3作品)○『大和物語』第147段「生田川」○観阿弥作謡曲「求塚」○森鴎外作戯曲「生田川」、というように、上代から近代にかけての息の長い利用のされ方があり、射程の長い立論が可能となる。『万葉集』、『大和物語』、謡曲「求塚」では、「墓」が作品の展開に関わる重要な「場所」としての役割を担っており(森鴎外の戯曲で演じられるのは、菟原娘子の自殺という「死」の「点」より前であり、死に至る娘子の心理描写に力が注がれている。そのため、死後の「墓」は登場しない)、上記のように時代を超えて数々の作品として生まれ出ることができたことの「鍵」を、この「墓」という〈場所〉が持つ表現性が握っていると考えられる。 本研究は上記の視点に立ち、この「菟原娘子伝説」の初発の位置にある『万葉集』の作品の表現を分析し、「墓」が作品の中の〈場所〉として選ばれていることの意義を追究している。その結果、(1)「墓」という〈場所〉には死者への「偲ひ」の時間が堆積していること。(2)墓の中に眠る人物と第三者の関係にある「作品の中の我れ」も、この堆積に立ち会うこと「偲ひ」に参加できるようになる機制があること、つまり、「墓」という〈場所〉が、で、「偲ひ」の回路を開き得ているということ。などを明らかにした。この研究成果を、新典社(東京都千代田区神田神保町)より近日刊行予定の『死してなお求める恋心-日本文学における「菟原娘子伝説」をめぐって-』(現在、初校校主段階)によって社会に還元する。この著書は新書である分、多くの人に解りやすい表現にすることに努めた。この点、科学研究費補助金交付の成果の、国民への開示・説明のはたらきも、十分に果たし得ているものである。
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