2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19520178
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Research Institution | Tezukayama University |
Principal Investigator |
清水 婦久子 Tezukayama University, 人文科学部, 教授 (30226253)
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Keywords | 源氏絵 / 源氏物語絵巻 / 詞書 / 物語本文 / 「絵入源氏物語」 / 和歌 / 絵画性 / 源氏物語千年紀 |
Research Abstract |
徳川本・五島本『源氏物語絵巻』の詞書において、源氏物語原文がどのように取捨選択されているかを、同時代の和歌や文学作品と同じ表現・用例を参考にして読み解いた。そして、その詞書の内容が絵巻の画面にどのように反映されているのかを考察した。その成果は、『源氏物語絵巻の読み方』(仮題)としてまとめる予定である。また、京都文化博物館で開催された「源氏物語千年紀展」および「読む、見る、遊ぶ源氏物語の世界」展の企画委員として、展示構成の企画と図録の編集・執筆を担当し、数多くの屏風絵・絵巻・画帖の画面および詞書を実見し得た。その結果、『絵巻』をはじめ多く源氏絵の大半が、歌のやりとりをする場面をたびたび描いていること、歌に詠まれた言葉を意識的に描いていることを確認し得た。その成果は、「源氏物語千年紀展」図録の総論「源氏物語の千年」や五十四帖屏風の図版解説などで示し、図録巻末には絵の場面で詠まれた歌を独自に口語訳して掲載した。また、お茶の水女子大学国際日本学シンポジウムの発表「源氏物語の絵画性」でも、多くの源氏絵の絵画性が物語の抒情性や歌の世界を表していることを論じるとともに、徳川本・五島本『源氏物語絵巻』と和歌との密接な関わりをも指摘した。その成果は「比較日本学教育研究センター年報」第五号に掲載された。これによって、『源氏物語絵巻』のみならず、源氏絵全体の研究において、物語本文・詞書の読解、特に和歌についての研究が不可欠であることを明らかにした。国内外の研究者は、歌の場面を積極的に描いた版本「絵入源氏物語」の挿絵に注目し始めているが、これも、拙著『源氏物語版本の研究』の研究成果を踏まえ、「源氏物語千年紀展」と「読む、見る、遊ぶ源氏物語の世界」展において、版本の挿絵が多くの源氏絵に影響を与えたこと、それが歌の場面と大いに関わっていることを周知させたことによる。
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Research Products
(13 results)