2007 Fiscal Year Annual Research Report
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19520183
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
寺田 龍男 Hokkaido University, 大学院・メディア・コミュニケーション研究院, 教授 (30197800)
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Keywords | 英雄叙事詩 / 軍記物語 / 比較文学 / 文字文化 / 口承文芸 / 聖職者 / 国際情報交換 / ドイツ:オーストリア:アメリカ |
Research Abstract |
助成研究の最初である19年度は、英雄叙事詩と軍記物語の享受相における共通点・類似点と相違点に着目した。具体的には、(1)「口承芸の担い手」および(2)「物語に対する宗教者(キリスト教・仏教)の態度」を出発点として、東西の両文芸ジャンルをとりまく社会環境を分析した。その結果以下の結論が得られた。 (A)従来軍記物語の享受史の研究では、もっぱら視覚障害者の琵琶法師や瞽女が注目されていた。しかし僧侶一般も説教の際「合戦物語」を題材としていたこと(『一言芳談』など)には今まで以上に注目すべきであろう。これにより、ヨーロッパでは中世全般を通して検証される「聖職者による英雄語り」とのより具体的な比較が可能となるからである。 (B)今年度はそのうち「下級聖職者の英雄語りに対する態度」「東西の上級聖職者の姿勢にみえる相違」を論文で展開し、とくに英雄語りをよく素材とする聖職者(説教師)を高位聖職者が批判するのが共通の現象であること、そしてキリスト教世界でも英雄語りは中世末期まで根強い人気を保っていたことを述した。 (C)口承文芸活動の実態がいまだ明らかでないヨーロッパの研究に対して、史料が豊富な日本中世における状況を記述した。今後専門家の批評を仰いだ上で、ヨーロッパ側の研究者に情報を発信する予定である。 (D)逆にヨーロッパ側では、個々の(口承)芸能者がどのような演目をレパートリーとしてかかえていたかを示す記録があるのに対し、日本側では(『新猿楽記』のような)詳細な記録が少ないので、この点の比較にも今後の発展の可能性を見だすことができることを明らかにした。
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Research Products
(1 results)