2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19520183
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
寺田 龍男 Hokkaido University, 大学院・メディア・コミュニケーション研究院, 教授 (30197800)
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Keywords | ドイツ文学 / 日本文学 / 比較文学 / 英雄叙事詩 / 軍記物語 |
Research Abstract |
1.軍記物語研究では従来から、生田弘治らによる「叙事詩」概念の桎梏をなかなか克服できなかったが、最近の軍記物語の研究動向から学びつつ、これまでの研究状況をドイツ文学研究者として考察した。とくに日本だけでなく海外でも影響が大きい小西甚一の研究、および小西が依拠したバウラ、ロードらの論説を検証した。その上で、軍記物語と英雄叙事詩を包括する上位概念の設定を提起した。比較の意義に関する論考(『軍記物語と英雄叙事詩(5)』)は、本助成研究においてもっとも重要な核をなす成果であり、それだけに少なからぬ研究者から(建設的批判とともに)ポジティブな批評が寄せられたのは幸いであった。 2.平成20年度から、英雄叙事詩『ヴィルギナール』の写本3系統(V10,V11,V12)にあらわれる紛争・平和・調停・交渉・儀礼等に関する語彙を実証的に考察している。平成21年度は「戦士」とその「敵」を表わす様々な語を統計的に分析する論文を別個に執筆した。これらにより、同一の作品でも写本により多様な異同が生じることを統計的に証明できた。また『ヴィルギナール』(V12)の語彙の傾向については、部分的ながら通説とは異なる事例を示すことができた。 3.(近年歴史学者アルトホフらにより西洋でも主張され始めた)文芸作品を「史料」として用いる方法論に関する議論にも頁献するため、昨年度の『アルプハルトの死』につづき『ディートリヒの敗走』の翻訳を進めた。これを果たせなかったのはまことに遺憾であり、平成22年度中の完了を目指す。
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Research Products
(3 results)