2007 Fiscal Year Annual Research Report
19世紀のドイツ語の歴史記述と物語り記述の比較分析研究
Project/Area Number |
19520186
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
原 研二 Tohoku University, 大学院・文学研究科, 教授 (60114120)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
SCHMITZ Brigitte 東北大学, 大学院・文学研究科, 教授 (10431488)
沼田 裕之 東北大学, 名誉教授 (80050269)
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Keywords | ドイツ文学 / 西洋史 / 文化史 / 思想史 / 文学論 / 哲学 / 国際研究者交流 / ドイツ;スイス |
Research Abstract |
本研究の成果は「物語と歴史の言説の研究」と「文献学的調査」の二つの柱からなる。 「物語と歴史の言説の研究」:研究代表者は、19世紀のスイスの歴史家ブルクハルトの主著『イタリア・ルネサンスの文化』の「試論」としての性格が、20世紀のムージルやアドルノの「エッセー」概念に通じるものであることを明らかにした。また19世紀のスイス在住の歴史小説家シールズフィールドの『南と北』を分析し、物語言説の分野でも、ラカンの精神分析に通じる革新的なテキストが19世紀にすでに書かれていたことを示した。分担者シュミッツは、20世紀の作家トーマス・マンの作品におけるブルクハルトの影響を跡付けた。分担者沼田は、ブルクハルトが現代日本においてどの様に受容されているかを実証的に検証し、この歴史家が現代日本において持つ意義を明らかにした。これらは、いずれもドイツ語論文としてまとめられ、従来のブルクハルトなどの研究を、国際的なレヴェルで一歩進めるものである。 「文献学的調査」:研究代表者は、『イタリア・ルネサンスの文化』に登場する人名について東北大学を中心に徹底的な調査を行った。シュミッツは、マールバッハで、文学と歴史記述に関連する資料調査を実施した。沼田は、マインツ、バーゼル等において、19世紀の歴史記述に関連して、ブルクハルトを中心にルネサンス関係の原資料の徹底的な資料調査を行い、ブルクハルトが『イタリア・ルネサンスの文化』で用いた原資料の大半を突き止めたが、これは、いままでヨーロッパの研究者の誰にもできなかった成果である。こうした文献学的な調査は、本研究推進のための基礎であるばかりでなく、将来の当該分野の研究者にとって精確な研究の基礎をなすものであり、いずれブルクハルトの歴史校訂版(スイス、シュヴァーべ社)のなかで公表される予定である。
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Research Products
(5 results)