2007 Fiscal Year Annual Research Report
ブレイクの複合芸術においてコントラポスト体位をとる女の表象
Project/Area Number |
19520192
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
今泉 容子 University of Tsukuba, 大学院・人文社会科学研究科, 教授 (40151667)
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Keywords | ウィリアム・ブレイク / 複合芸術 / 女 / アフロディテ / ジェンダー / ロマン主義 / 英国美術 |
Research Abstract |
この研究の目的は、イギリスロマン派詩人・画家ウィリアム・ブレイク(William Blake)の複合芸術作品に頻出する人間の「体」の「ポーズ」に注目し、とりわけ裸体の女がとるコントラポストというポーズの意味を、「アフロディテ」表象の伝統に照らし合わせながら解明することである。片足に重点をかけて体をゆるいS字カーブ状にしなわせるコントラポストのポーズは、芸術作品における裸の女の最初の出現例である「アフロディテ」が取ったものである。ブレイクの複合芸術においては、アフロディテ集団と言ってもよいほど多くの裸の女たちが、アフロディテのポーズをとって立ち現れるが、彼女たちが示すさまざまなコントラポスト体位のバリエーションを検出することが、本研究で行おうとしたことである。初年度は、ブレイクの「コントラポスト体位をとる女」の典拠として、どのような素材がブレイクの手の届くところにあったか、またそれらの素材において女の「コントラポスト体位」はどのような意味をもっていたか、を考察した。紀元前350年にクニドス市が購入したプラクシテレス制作のアフロディテ像以来、さまざまなバリエーションがつくられているが、美術におけるコントラポスト体位の女を、ブレイクが見たと思われる美術作品や18世紀に出版された絵画・彫版画・彫像の美術書やカタログのなかに検出した。具体的には、ブレイクが多くを学んだミケランジェロやラファエロをはじめ、敵視していたヴェネチア派・フランドル派やジョシュア・レノルズなどの作品、かなり意識的に見ていた同業者たちの彫版画などを分析対象とした。
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