2007 Fiscal Year Annual Research Report
啓蒙前期の地下文書と政治新聞における神の正義論解体
Project/Area Number |
19520194
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
三井 吉俊 Chiba University, 大学院・人文社会科学研究科, 教授 (00157546)
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Keywords | フランス文学 / 十八世紀 / 啓蒙思想 / 地下文書 / 思想史 / ピエール・ベール / ピエール・キュッペ / 万人に開かれた天国 |
Research Abstract |
「ヨーロッパ意識の危機」期における宗教的亡命者であるジャーナリスト、出版関係者の活動の中に,「神の正義」の欺瞞性自覚,宗派的教義に立脚する非寛容理論の解体を跡付けることを当研究は目的とする。上記の資料の本格的調査の前に,啓蒙前期に生産された地下文書において,弁神論問題をめぐってカトリック教会、プロテスタント諸派から提出された大胆な教義組み換えの提案や理神論的アプローチを分析する必要が出てきた。なぜなら,周辺的文筆家の大胆な提言と新たな社会に対応する宗教構築の試みとの二つが,盛期啓蒙思想内において競合、対立するからである。具体的には,ピエール、ベール晩年における理性主義的弁神論に対する批判に,トリエント公会議体制の中にいながら大胆かつ異端的提言を行った地下文書,ピエール、キュッペ『万人に開かれた天国』を解析した。天国において救われる人間は少数であるという,主としてカルヴァン派らのプロテスタントの教理に対して,万人救済というもう一方のキリスト教教理を救うべく,キュッペは恩寵、救済論を二段階に設定する。すなわち,万人救済を保証する(キリストによる)瞭罪の恩寵と,人間の功罪を天国での位階に反映させる過剰の恩寵を聖書解釈により析出しようとする。これはキリスト教会側からの,新たな社会に対応する理性主義的な教理組み換え提案の極北を示す立場と思われる。この修道士はカトリック教会から断罪され,理論撤回を行ったが内心では承服せず,この文書は代表的地下文書のーつとなった。またこれは,ベールの思想的営為が啓蒙思想に与えた巨大な影響を例証するーつとも言える
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