2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19520199
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
塚本 昌則 The University of Tokyo, 大学院・人文社会系研究科, 准教授 (90242081)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
月村 辰雄 東京大学, 大学院・人文社会系研究科, 教授 (50143342)
中地 義和 東京大学, 大学院・人文社会系研究科, 教授 (50188942)
野崎 歓 東京大学, 大学院・人文社会系研究科, 准教授 (60218310)
畑 浩一郎 東京大学, 大学院・人文社会系研究科, 助教 (20514574)
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Keywords | 前衛 / 後衛 / 紋切り型 / 死 / 視覚的体験 / 時間意識 |
Research Abstract |
20世紀文学はきわめて多様な文芸思潮を生みだしたが、その全体の俯瞰を可能とするような作品美学を見出すことは可能だろうか? 今年度は、とりわけ「独創性」に焦点を当て、この概念の射程を「紋切り型」との対比においてさらに深めることができた。テル・アヴィブ大学名誉教授シルヴィオ・イェシュア先生に、紋切り型の意義を生涯説きつづけた作家ジャン・ポーランについて講演していただき、有益な議論を交わすことができた(「ジャン・ポーランとハイン=テニィー効果的言語の秘密」2008年6月10日、東京大学文学部)。その議論を通して、これまで〈前衛〉と位置づけられていたシュルレアリスム、ヌーヴォー・ロマン、ヌーヴェル・クリティックなど、時代の先陣を切っているようにみえた運動にも、実際にはこれまで幾度も繰り返されてきた表現を蘇生させる試みという側面がある、と考える道筋が見えてきた。 シュルレアリスムについては、早稲田大学・鈴木雅雄氏、山形大学・齊藤哲也氏とともに、研究代表者が「シュルレアリスム的視覚体験とは何か-フレーム、イメージ、キャラクター」と題するシンポジウムに参加(2008年10月24日、早稲田大学戸山キャンパス)、その成果を『水声通信』同年十一/十二月号に発表した。視覚的側面から見ても、20世紀文学の最も重要なアヴァンギャルド運動が、実際には絶え間ない革新の美学とはほど遠い側面を持っていることが確認された。重要なのは、体験をどのように言語化し、視覚化するのかという点をもう一度再考することである。 その意味で、文学表現に深く刻印された体験をめぐる言葉のあり方を再検討する作業を開始した。具体的には死に関する言説を検討し、「二十世紀フランス文学と死」という論考にまとめた。この論考によって、20世紀文学を歴史上の出来事との関係で、さらにはきわめて古い紋切り型との関係で分析する出発点を築くことができた。
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