2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19520199
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
塚本 昌則 The University of Tokyo, 大学院・人文社会系研究科, 准教授 (90242081)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
月村 辰雄 東京大学, 大学院・人文社会系研究科, 教授 (50143342)
中地 義和 東京大学, 大学院・人文社会系研究科, 教授 (50188942)
野崎 歓 東京大学, 大学院・人文社会系研究科, 准教授 (60218310)
畑 浩一郎 東京大学, 大学院・人文社会系研究科, 助教 (20514574)
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Keywords | 前衛 / 後衛 / メディア / 危機 / 自伝 / 死 / 再生 / メランコリー |
Research Abstract |
20世紀文学はきわめて多様な文芸思潮を生みだしたが、その全体の俯瞰を可能とするような作品美学を見出すことは可能だろうか?本研究はこの疑問を、多彩な時間意識の表現、とりわけ年代順の時間の流れとは異なる、さまざまな時間意識の表現という視点から分析しようとするものである。 本年度は<後衛>研究に先鞭を付けたパリ第10大学のウィリアム・マルクス教授を招聘し、2009年7月に「精神」「独創性」をテーマとする講演会・研究会を開催した。そこで交わされた議論を、『<前衛>とは何か?<後衛>とは何か』の上梓に活かすことができた。この共同研究は、直接には「フランス文学における時間意識の変化」(基盤研究B2・2004~2006年度)で行われた研究会に基づいているが、全体を総括するため今回の研究で得たさまざまな知見を取り入れている。具体的には1)絶え間ない革新の美学に一見対立する<後衛>の美学は、実際はそれ自身のうちに革新への契機を備えている2)二十世紀に発達したメディアの中でも、文学においては、時間とメッセージを錯綜させるという、本来の機能とは異なった側面が重要な役割を果たしている3)近年、自伝と写真との関係が深まってきたが、テクストとイメージを交錯させるこの手法には、ルソー以降の近代的自伝、十九世紀小説の登場人物等に見られるのとは異なったアイデンティティーの探求の形が認められる、等の考察が得られた。 二十世紀には、歴史との関係で「危機」を声高に叫ぶ言説が流行した。今回の研究で「危機」、さらには「死」が、実際には変貌や再生の契機として捉えられることが多いことを確認した。ただし、この世紀は普遍的生への信仰を失った時代でもあるため、その願いは反転しメランコリーが拡大してゆく。これについては「無意識」に関する分析を前面に押しだす予定の次の研究で明らかにしたい。
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[Journal Article]2009
Author(s)
Yoshikazu NAKAJI
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Journal Title
Le Vers libre dans tous ses etats Histoire et poetique d'une forme (1886-1914)(L'Harmattan)
Pages: 33-45
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[Journal Article]2009
Author(s)
Yoshikazu NAKAJI
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Journal Title
Rimbaud, l'invisible et l'inoui. Poesies, Une saison en enfer (1869-1873)(Presses Universitaires de France)
Pages: 120-140
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[Journal Article]2009
Author(s)
Yoshikazu NAKAJI
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Journal Title
Rimbaud. Des Poesies a la Saison(Classiques Garnier)
Pages: 245-263
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