2010 Fiscal Year Annual Research Report
近代同性愛アイデンティティの成立とワイルド裁判の歴史的位相
Project/Area Number |
19520204
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Research Institution | Yokohama National University |
Principal Investigator |
宮崎 かすみ 和光大学, 表現学部, 教授 (10255200)
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Keywords | オスカー・ワイルド / 同性愛 / アイデンティティ / セクソロジー / ディジェネレーション(変質論) / クィア批評 / ワイルド裁判 / マスキュリニティ |
Research Abstract |
最終年度にあたる本年度は、本研究の最終課題であるオスカー・ワイルドの評伝執筆に向けて調査・研究に集中した。夏期休暇中に行ったイギリス・アイルランドにおける資料収集旅行では、評伝執筆に必要な資料で、日本では入手しにくいものについて最終的に確認したうえで、ゼロックスコピーなどの形で効率的に収集することができた。その他評伝執筆に必要な図書で国内で入手可能なものは極力ネットなどで入手し、それらは概ね読破するに至っている。 現在のところは、残念ながら評伝の執筆はまだ完成していない。執筆しながらも背景的知識等の不備な点を自覚したり、あるいは最近刊行されたばかりの研究書で、本稿に盛り込むべき新知見が含まれていることが判明したりして、それらを折に触れて調査・研究しながら執筆を鋭意進めているところである。なかでも19世紀末のワイルドが中心人物として率いていた思潮においてこイタリア・ルネサンスの復興がブームとなり、それがひそかに同性愛者のアイデンティティ形成と結び付いていたことを明らかにしたYvonne Ivoryの労作、The Homosexual Revival of nenaissance Style,1850-1930(2009)の成果、および、同じ時期の同性愛とローマン・カトリックがゴシックというイメージによって緊密に結び付けられていたことを論じたPatrick O'MalleyのCatholicism,Sexual Deviance,_And Victorian Gothic Culture(2006)の成果が、当該研究において非常に重要である。これらの成果を取り込みつつ評伝を書くために軌道修正を適宜しながら、できるだけ早い時期に刊行するために鋭意努力中である。
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Research Products
(4 results)