2007 Fiscal Year Annual Research Report
米国社会と文学が歴史化する「男らしさ」:「戦争後」を生きる「奇形の男性像」研究
Project/Area Number |
19520206
|
Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
久保 拓也 Kanazawa University, 教育学部, 准教授 (80303246)
|
Keywords | アメリカ文学 / 男性学 / 男性史 / Mark Twain / 医学史 |
Research Abstract |
本研究は,米国社会および米国の文学作品を考察するため「男性性研究(Masculinity Studies)」の視点を援用し、これにより明らかになると思われる様々な「奇形の男性像」の問題を考察するものである。これを通じ「男性とはどのような存在か」という普遍的で、同時に現代的な問題の解決に取り組むものである。 平成19年度の研究においては、19世紀アメリカでこの問題に取り組んだと思われる作家、マーク・トウェインの作品が表す「男性性を規定する大衆」の存在を中心に考察している。トウェインは「大衆」のための文学を書くことを求められ、またそれに自らの使命を認めていた。しかし彼は「大衆」の本質を見抜き、またその存在の横暴さに苦しむことにもなった。トウェインが「大衆」の好奇の視線に自らの姿をさらす「結合双生児」を、自分自身を表す隠喩として数度にわたって作品の核としたのはその理由にもよるだろう。またこの「大衆の視線にさらされる不自由さ」を巡る問題は、当時、南北戦争時の戦場医療により得た肉体的あるいは精神的「不自由さ」を抱えたまま社会に戻らざるを得なかった「奇形の男性たち」のあり方を考察する際にも有効な示唆を与えている。平成20年度は、他の重要な作家による作品の研究、19世紀当時の医学・、社会史等の研究を深めるのはもちろん、成果発表を精力的に行うことを通じさらなる進展に努めたい。 なお、平成19年度の研究成果は書籍(長尾輝彦編『文学研究は何のため一英米文学試論集』)所収の論文、学会での口頭発表(東北英文学会第62回大会米文学部門シンポジウム)、およびその原稿を収めた予稿集などにおいて発表した。
|