2009 Fiscal Year Annual Research Report
『マージェリー・ケンプの書』とカルメル修道会:平信徒の霊的教育に関する写本研究
Project/Area Number |
19520209
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Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
久木田 直江 Shizuoka University, 人文学部, 教授 (00271693)
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Keywords | Margery Kempe / Carmelite / Thomas Netter / Alan of Lynn / Lollard |
Research Abstract |
本年度は15世紀の初めにイングランドで活躍した二人のカルメル会士に焦点を当てた。その一人は1414年から1430年にカルメル会イングランド管区長を務めたトマス・ネッター(Thomas Netter of Walden, 1370-1430)である。ネッターは反ロラード・キャンペーンの論客として知られ、著作Doctrinale antiquitatum fidei catholicae ecclesiaeはコンスタンス公会議以降のカルメル会の活動に大きな影響を与えたが、また、その一方で、ノリッジの隠修女の庇護者となり、女性の学問や観想的生活を奨励した。もう一人はケンブリッジ大学出身の神学博士で、マージェリー・ケンプの霊的指導者でもあったアラン・オブ・リン(Alan of Lynn, d. 1432)である。アラン・オブ・リンは学問と司牧に生涯を捧げ、神秘主義思想や終末論にも関心をもち、スウェーデンの聖ビルギッタの『啓示』などのインデックスをつくった。『マージェリー・ケンプの書』によると、アラン修道士がマージェリーに行っていた聖書教育や霊的指導が管区長ネッターの不興を買い、二人は面会を禁じられた。よって、この関係を背景に、ネッターの「禁止令」を中心に中世末のカルメル会の霊性、著作活動、及び司牧活動について考察し、カルメル会の目指した平信徒の霊的教育について検討した。反ロラード・キャンペーンについてはInternational Medieval Congress, Leeds 2009のRound Table Discussionで、平信徒教育については日本中世英語英文学会・全国大会で発表した。
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