2007 Fiscal Year Annual Research Report
フランス15・16世紀の愚者演劇にみる聖俗混淆の知的パラダイムの歴史的文化的研究
Project/Area Number |
19520229
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Research Institution | Nara University of Education |
Principal Investigator |
川那部 和恵 Nara University of Education, 教育学部, 教授 (70332765)
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Keywords | フランス中世世俗劇 / 愚者 / 聖と俗 |
Research Abstract |
本研究は、フランス15・16世紀の世俗劇に関して、愚者ないし道化のトポス、聖・俗の関係性、そして認識論の三つの領域にまたがる視点から光りを与え、転換期の文化の一翼を担ったフランスの演劇道化の知のあり方を聖と俗の枠組の中で解明しようとするものである。そのなかで初年度である平成19年度はもっぱら、本テーマの基礎的部分をなす原典研究に従事した。すなわち、世俗劇の作中、道化(的人物)の言説に表れた知の形式が聖と俗との関係性においていかなるものであるかという観点から、テキストの解読・分析・考察を行った。 対象としたのは、世俗劇のうち、道化ないし道化的人物(sot, fou, badin)を含むテキストで、以下の内訳にみるようにジャンルは限定していない。(1)ソティ(ソティは全登場人物がソsot=愚者である): Recueil general des sotties, 3 vol. ed. E. Picot;Recueil Trepperel: les sotties;他、の撰集から。(2)ファルスのうち道化的人物badin(この名称は必ずしも明記されているわけではないので、事前に全200数十作品を通読して割り出す必要がある)の登場する作品:Recueil du British Museum;Recueil Cohen;Recueil Trepperel: les fares;Recueil La Valliere;他、の撰集から。(3)モラリテと滑稽説教から道化fou(この人物の割出しについてもファルスと同じく事前の予備的作業の必要あり)の登揚する作品:Moralites francaises, 3 vol. ed. W. Helmich;Recueil de sermons joyeux, ed. J. Koopmans;他、の撰集から。 対象とすべき作品は最終的には二百作品ほどに上ると見込まれるが、本年度着手したのはそのおよそ6割である。
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