2009 Fiscal Year Annual Research Report
アメリカン・ルネッサンスにおける同時代ヨーロッパ思想のインパクト研究
Project/Area Number |
19520241
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
竹内 勝徳 Kagoshima University, 法文学部, 教授 (40253918)
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Keywords | ナサニエル・ホーソーン / ハーマン・メルヴィル / 西洋思想 / アメリカン・ルネッサンス / アメリカ文学 / 『白鯨』 / イマニュエル・カント / ジョン・ロック |
Research Abstract |
平成21年度は、時代のコンテクストと作家たちの美学の相互関連を解き明かしたが、特にヨーロッパ思想がロックからルソー、カントへと推移するにつれて、経験主義、合理主義から人間の生得的な調和へ関心が移ったのに対して、アメリカでは経験主義と観念論が特異な形で混在し、政治や大衆文化にまで浸透していたとする仮説を検証した。博物学のような科学はエマソンやソローの性善説を裏付け、ホーソーンはそれを疑い、メルヴィルはそれをパロディ化した。この点はP.T.バーナムのような興行師にも共通する。領土拡大を正当化する「マニフェスト・デスティニー」の言説は言わば生得説だが、アメリカ建国の理念は白紙から価値を創造できるとするロックの経験論の影響を強く受けている。両者の螺旋状の絡みがアメリカの政治、文化を特色付けていると考えた。以上のような骨子に沿って、アメリカン・ルネッサンス文学作品をヨーロッパ思想と総合的に比較し、西洋思潮に対置する形で再定位させた。この成果として、日本アメリカ文学会での研究発表を大幅に修正した論文『アメリカン・ダイアレクティクスの行方』を日本英文学会の機関誌である『英文学研究』に投稿した。また、ここまでの研究を踏まえ、「モノ」と精神、経験論、生得論、身体、といったキーワードを用いてテクストを分析し、成果発表として『白鯨』の身体論と発生学的研究を組み合わせた「"Clap eye on" Captain Pe(g)leg/Ahab」を『アメリカ文学研究』(日本アメリカ文学会)に掲載した。
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Research Products
(3 results)