2007 Fiscal Year Annual Research Report
英語圏児童文学における食と身体性:歴史的・社会的観点からの考察
Project/Area Number |
19520246
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Research Institution | Aichi Prefectural University |
Principal Investigator |
川端 有子 Aichi Prefectural University, 外国語学部, 教授 (80224830)
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Keywords | 児童文学 / 食文化 / 英語圏文学 / 身体論 |
Research Abstract |
本研究は、英語圏児童文学における<食>の表象を、歴史的、かつ共時的に探り、分析することを目的として、児童文学の中に描かれた食物とそれに対する態度、食べることにまつわる文化現象全体を対象とし、その歴史的変化と、人種、ジェンダー、階級文化においての差異を分析し、その意味と負わされた役割を探ろうというものである。そのために歴史的軸として、19世紀から21世紀までの英語圏の児童文学から例を抽出し、食とその身体性へのかかわりが、倫理的・教育的・宗教的背景の移り変わりと共にどう描かれてきたかを考察する。 19年度の研究会活動としては、後半11月から3月にかけて月に一度、研究協力者と研究会を持ち、上記の観点にかかわりのある文献をリストアップし、収集したものの解題・報告・意見交換を行った。また、2月には文化人類学専攻の講師を招聘し、講演をしてもらったのち「食と異文化」について討論会を行った。産業革命以後の英語圏文化が精神性と物質性の二項対立にどう対処してきたかという問題、子どもの身体性への意識の変遷、英国におけるマイノリティとその表象の食とのかかわりといった問題が浮かび、具体的な作品の分析に入ろうとしている。 一方、個人としては、6月には関西学院大学英文学会に招かれて、『不思議の国のアリス』、『ピーターパン』、『子供たちの晩餐』について講演を行い、これらの作品には、おとなの権威に対する子どもの反乱の場としての食卓が描かれていると分析した。11月のイギリス児童文学学会では、上記の講演の内容から、『不思議の国のアリス』を抜き出して『鏡の国のアリス』についての考察をも含め、二つのアリスの物語における食と主体性の問題について発表した。これらは今後、論文の形にして学会誌に発表する予定である。
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