2009 Fiscal Year Annual Research Report
英語圏児童文学における食の表象:通事的・共時的観点からの考察
Project/Area Number |
19520246
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Research Institution | Aichi Prefectural University |
Principal Investigator |
川端 有子 Japan Women's University, 家政学部, 教授 (80224830)
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Keywords | 児童文学 / 食文化 / 身体性 / 比較文学 |
Research Abstract |
本研究は、英語圏児童文学における<食>の表象を、歴史的、かつ共時的に探り、分析することを目的として、児童文学の中に描かれた食物とそれに対する態度、食べることにまつわる文化現象全体、その意味と負わされた役割を探ろうというものである。そのために歴史的軸として、19世紀から21世紀までの英語圏の児童文学から例を抽出し、食とその身体性へのかかわりが、倫理的・教育的・宗教的背景の移り変わりと共にどう描かれてきたかを考察する。 2009年の研究会活動としては、5月に宮沢賢治研究者に講演をしてもらい、賢治童話を食から読む可能性を論じあった。10月には『ピーターラビットのおはなし』を食の観点から再考する講演を聞いた。3月にかけて月に一度、研究協力者と研究会を持ち、産業革命以後の英語圏文化が精神性と物質性の二項対立にどう対処してきたかという問題、子どもの身体性への意識の変遷、英語圏におけるエスニック・マイノリティとその表象と食とのかかわりといった問題が収められた論文集Critical Approaches to Food in Children's Literatureを読書会形式で読み、総まとめとしている。 また、12月には海洋冒険小説の研究者を招聘し、講演をしてもらったのち「食とサバイバル」について討論会を行った。話題はロビンソン・クルーソーの系譜がどのように食、カニバリズム、帝国主義にかかわるかについての議論に広がった。一方、個人としては、2007年11月のイギリス児童文学学会で発表した『不思議の国のアリス』と『鏡の国のアリス』についての考察を『アリスは食べるのか、食べられるのか-不思議の国・鏡の国における捕食関係の意味』として論文化し、イギリス児童文学会紀要に発表・掲載された。2008年の学会では、戦時中の階級性と食、共同体の形成の問題に焦点を当て、ロバート・ウェストールの『海辺の王国』について発表した。これは2010年2月発行の同学会紀要に発表、掲載された。
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