2007 Fiscal Year Annual Research Report
トランスナショナルなものをめざす文学的企て-フォークナーと中上を軸として
Project/Area Number |
19520248
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Research Institution | Nagoya City University |
Principal Investigator |
田中 敬子 Nagoya City University, 大学院・人間文化研究科, 教授 (70197440)
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Keywords | フォークナー / ポストコロニアリズム / トランスナショナル / トランスパシフィック / 家父長制社会 / 中上健次 / ポストモダン / ジェンダー |
Research Abstract |
平成19年度は、これまでのフォークナー研究に用いられた文学理論を整理、評価しつつ、新たな批評視座を求め、その展望を論文「フォークナーと批評理論-反復と脱構築」にまとめた。そこでは、一般に対立して語られるポストモダニズムとポストコロニアリズムを結合し、トランスナショナルな文学的企ての基盤となる理論として構築することを検討している。また、日本ウィリアム・フォークナー協会編『フォークナー事典』では、編集委員を務め、日本のフォークナー研究の集大成としての事典の編集に携わり、フォークナー研究のグローバル性と、中上健次や大江健三郎など、フォークナーに影響を受けた日本の作家などのトランスパシフィックな視点の強化に努めた。一方、論文「キャプラのブラック・コメディ-『毒薬と老嬢』の家族と理想的アメリカ社会」は、第2次世界大戦前後のアメリカ合衆国が男性に家父長制社会の長としての役割を求める中、シスネロスのようなメキシコ系女性作家とは違う、枢軸国出身男性移民である劇作家や映画監督によるジェンダーと国民国家批判のあり方を抑圧と抵抗の喜劇において考察し、国家枠とジェンダー問題の関係性を確認した。さらにマーク・トウェイン協会全国大会シンポジウムでは、「トウェインとフォークナーのヒューモアについて-二人のCon Man」という題でパネリストとして発表した。アメリカ南部というローカリズムと家父長制社会に抵抗する作家の語りの戦略について、脱構築、ポストモダンな視点から検討した。
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