2007 Fiscal Year Annual Research Report
保守革命論の「前期」「後期」におけるドイツ語詩人・作家の「理想的国民」像
Project/Area Number |
19520250
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Research Institution | Kyoto Prefectural University |
Principal Investigator |
青地 伯水 Kyoto Prefectural University, 文学部, 准教授 (10264748)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
友田 和秀 奈良県立医科大学, 医学部, 准教授 (10207631)
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Keywords | 保守革命 / ホフマンスタール / トーマス・マン / ファシズム / デモクラシー |
Research Abstract |
保守革命「前期」における、理想主義者の代表者ホフマンスタールの「保守革命」は、反動的契機として「宗教改革とルネサンス」をあげており、この二つの運動以前の神聖ローマ帝国にユートピア世界を見出しているので、西ヨーロッパ世界の東漸運動、とくにフランス革命に反動的契機を見出す保守革命の奔流からは逸脱している。したがって彼の保守革命は、歴史哲学の用語として用いられたというのが青地伯水の主張である。現実に対して積極的に働きかけた保守革命「後期」の代表として取り上げられたのは、トーマス・マンである。友田和秀はマンが1937年亡命文学雑誌『尺度と価値』において「保守革命」をナチスのドイツ革命のスローガンというネガティヴな用法から救済し、本来的な「保守革命」概念の恢復を要請するという。マンのナチズムに対する対抗軸は、フマニテートであり、デモクラシーである。つまりファシズムに対抗しうる新たなフマニテートの獲得こそが「保守革命」の使命であるという。マンが1937年『尺度と価値』で用いる「保守革命」は、たぶんに理念的であった1921年の「保守革命」に比べ、具体的かつ戦闘的である。ファシズムを倒すためのデモクラシーの刷新こそが、マンのいう「保守革命」の内実であるというのが筆者の主張である。上記の主張を大筋とする研究成果をほか2名の発表者とともに、2007年日本独文学会秋季研究発表(10月7日大阪市立大学)で行われたシンポジウム「「保守革命」をめぐって-ナチとの断絶、ナチへの回収-」で発表した。その後、会場の独文学会員からの活発な質問に答える形で、一時間あまりにわたって討論をおこなった。この活発な討論が、本研究のアクチュアルな意義と重要性を証していると思う。またこのシンポジウムの成果は、「学会叢書」としてまもなく発刊される予定。
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