2007 Fiscal Year Annual Research Report
初期印刷本期にみる作者と印刷家による協同出版活動の出現に関する研究
Project/Area Number |
19520253
|
Research Institution | Fukuoka Women's University |
Principal Investigator |
向井 剛 (向井 毅) Fukuoka Women's University, 文学部, 教授 (40136627)
|
Keywords | 初期印刷本 / 書物出版史 / ド・ウォード / ピンソン / 書誌学 |
Research Abstract |
W.ボンド作と想定されている宗教書Pilgrimage of Perfeccyonの1526年ピンソン版と1531年ド・ウォード版の現存コピーを対象に、テラスト及びパラテクスト上の異同について詳細な比較調査を行った。そめ結果、ピンソン版は得意な折記号や巻・章の配列をもつこと、本支に異同があることなどが判明した。例えば、"the Tree of Grace"の話が「第2巻16章の後に配置すべきであった」との訂正指示付きで前付事項の箇所に収録されている。作者と印刷家の不連携を示唆する本のつくりは、ド・ウォード版において訂正されている。また、特定の宗教会派(シオン教会)に向けられた書物が、第2版において読者を「ラテン語の読めない一般信徒」に想定し直した跡も見出した。また、作者ボンドのいま一つの作品The Directory of Conseience (1527;1534)も同様に2版において、序文の書き換えと著者の特定及び読者層の拡大を図ったと考えられる編集が観察される。 上記2つの宗教書の定振りを記述することを通して、著者と印刷家との協働或いは連携出版の誕生を解明する資料作りを行った。 あわせて、各コピーに書き残された読者反応の調査も行った。例えば、宗教改革前後に出版された事情を示すように、Perfeccyonのケンブリッジ大学図書館コピーには'purgatory'の語が消され、大英図書館コピーには広範な本文抹消を特定した。 本調査により得られた事実はいずれも未報告のものであり、次年度の更なる調査を経て論文の形にまとめる予定である。
|