2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19520254
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Research Institution | Tohoku Gakuin University |
Principal Investigator |
原口 尚彰 東北学院大学, 文学部, 教授 (60289048)
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Keywords | マカリズム / 幸い / 黙示 / 知恵文学 / 幸福論 / 修辞学 / 文献学 / 初期キリスト教 |
Research Abstract |
平成22年度は、この研究プロジェクトの最終年度であるので、研究全体を展望した結論を得ることに努めた。本研究は、新約聖書中の山上の説教・平野の説教に出てくるマカリズムのみならず、福音書に出てくるすべてのマカリズム、新約書簡や黙示録、さらには、使徒教父文書に出てくるすべてのマカリズムを個別的に詳細に検討した後に、全体を展望して一定の結論を得ることが出来た。 第一に、初期キリスト教は旧約聖書から継受したマカリズム(幸いの宣言)という文学形式を用いるにあたっては非常に柔軟であり、修辞的目的に合わせて、異なった人称や多様な文体を展開している。文体的にも内容的にも非常に多様で、異なったコンテクストにおいて、異なった表現、異なった意味付けのもとに臨機応変に用いられていた。このことは、マカリズム(幸いの宣言)が初期のキリスト教において、活ける宗教の言葉として形成発展したことを示している。 第二に、マタイによる福音書とルカによる福音書は、Q資料やそれぞれの特殊資料に含まれていた個々の幸いの宣言を、新たな物語的文脈に置くことによって文学的効果と新たな意味付けを創り出している。マカリズムと物語的文脈の解明は本研究独自の成果である。 第三に、修辞的機能について言えば、マカリズム(幸いの宣言)は基本的には演示的機能を果たす文学形式である。但し、演示的機能は助言的機能を排除せず、幸いの宣言は幸いな状態への招きを暗示している。本研究は、マカリズムの修辞的機能についての最も包括的な研究である。
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Research Products
(1 results)