2007 Fiscal Year Annual Research Report
<翻訳>の拓く批評可能性-ローベルト・ヴァルザーの作品の英・仏・日本語訳に即して
Project/Area Number |
19520262
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Research Institution | Tsuda College |
Principal Investigator |
新本 史斉 Tsuda College, 学芸学部, 准教授 (80262088)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
フランツ ヒンターエーダー=エムデ 山口大学, 人文学部, 教授 (00209157)
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Keywords | ローベルト・ヴァルザー / 翻訳論 |
Research Abstract |
2007年9月末に追加採択が決定して以来、今年度後半は、ローベルト・ヴァルザーの散文小品群の既刊英訳アンソロジー3冊、既刊日本語訳アンソロジー2冊の構成・翻訳方法の分析を研究課題とした。準備作業として、英語、日本語における翻訳研究書を中心に書籍を購入し、さらにメールその他による研究進捗状況報告、打ち合わせを行った後、津田塾大学および山口大学における2度の研究会において、研究代表者および研究分担者が研究成果を報告し、討議を重ねた。その結果、英語圏におけるヴァルザー作品の翻訳受容は、戯曲、一人称体、三人称体、動物寓話、論説体、さらには手紙までも含め、後期ヴァルザーの文体の多様性を伝えることを意識したアンソロジーから始まり、それに続いて、ヴァルザー研究において新たに詩学的重要性が指摘されるようになった作品を中心にさらなるアンソロジーが編まれる、という形ですすめられていることが明らかになった。それに対して日本語訳アンソロジーにおいては、一定の「作家像」を提示する意図がうかがえ、作品選択のレベルにおいて、英語圏の受容とは異なったバイアスがかかっていることが確認された。(両言語におけるアンソロジーをならべてみると、重なっている作品はきわめて少ない。)他方、構造、歴史の点において、ドイツ語とより親近性をもっているはずの英語への翻訳において、テクストの複雑性を縮減させ「読み易く」するための「合理化」がかなり施されている点も指摘された。この成果をもとに、いかなる翻訳方法、作品構成であれば、英訳においては「合理化」ゆえに消去されている原文テクストの可能性に光をあてることができ、同時に、既存の日本語訳においては前面におしだされた「作家イメージ」の陰に隠れてしまっている原文テクストのレトリックに十二分に配慮したものとなりうるか、来るべき日本語訳アンソロジーにあり方について、具体的な方向が打ち出された。
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Research Products
(4 results)