2008 Fiscal Year Annual Research Report
<翻訳>の拓く批評可能性--ローベルト・ヴァルザーの作品の英・仏・日本語訳に即して
Project/Area Number |
19520262
|
Research Institution | Tsuda College |
Principal Investigator |
新本 史斉 Tsuda College, 学芸学部, 准教授 (80262088)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
ヒンターエーダーニエムデ フランツ 山口大学, 人文学部, 教授 (00209157)
|
Keywords | ローベルト・ヴァルザー / 翻訳論 |
Research Abstract |
今年度は、19年度における研究会での発表を基盤に、研究代表者である新本史斉が、微小文字で書かれたヴァルザー晩年の遺稿テクスト(ミクログラム)の内包する<表象の可能性/不可能性>をめぐる問題を『津田塾大学紀要41号』掲載の論文、『ローベルト・ヴァルザーの「ミクログラム」論考I--長編小説「盗賊」における自己言及構造について--』で論じた。そこでは、まさに英訳・仏訳において(再)表象されそこなっている箇所こそ、ヴァルザーのテクストの批評可能性の核心に関わる部分であることが明らかにされている。 また、今年度、三月の研究会では、ヴァルザー最初の長編小説『タンナー兄弟(Geschwister Tanner)』の日本語訳(試訳)および仏訳に照らし合わせつつドイツ語原文を読むことで、一見、平易に見える原文がいかなる複雑性を抱え込んだテクストであるかを確認し、その上で、その複雑性を日本語訳文において再演するには、いかなる方法が考えられるかについて議論を行った。この議論に基づいて、翌21年度には、一方では翻訳実践の形で、『タンナー兄弟』の日本語訳を刊行し、もう一方では、翻訳論の形で、翻訳比較を通じた当該小説の分析を発表し、実践と分析の両面からこの作品に潜在している可能性を可視化することを予定している。また、三月の研究会では、翻訳論の分野における最近刊の好著のひとつである"Anders gesagt-autrement dit - in other words"(Peter Utz著、2007年刊)を取り上げ合評した。この合評を基盤に、翌21年度には、研究分担者ヒンターエーダー=エムデ、フランツによる当該書の書評が『ドイツ文学』に掲載される予定である。
|
Research Products
(4 results)