2007 Fiscal Year Annual Research Report
ポール・ロワヤルとジャンセニスム:霊性と読者層からみた両者の相関関係
Project/Area Number |
19520265
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Research Institution | Musashi University |
Principal Investigator |
望月 ゆか Musashi University, 人文学部, 准教授 (30350226)
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Keywords | ジャンセニスム / パスカル / フランス17世紀 / 文体 / 読者層 |
Research Abstract |
ポール・ロワヤルの霊性とジャンセニスム神学,霊性教化と論争は,アルノー著『救霊のためのイェス・キリスト信仰の必要性』(1641年執筆,1701年死後出版)から明らかなように,調和的に融合していた。しかしジャンセニスム論争の展搦により,両者は分裂互て独自の発展を遂げてゆく。本研究は,ポマル・ロワヤル神学者による論争書に特徴的な読者層であるオネジト云について,フランス古典主義文学の傑作『プロヴァンシアル』との関係で考察した。恩寵開題で危機的な立場に立たされたポール・ロワヤル神学者(アルノー,ブルゼイス)は,1650年代初頭に新たに文学的・文体的見地からイエズス会とそのシンパの攻撃を始める。従来から,美しいペリオッド文体による教父神学の紹介により,聖職者層だけでなく教養あるオネットムたちから評価を得ていたアルノーたちは,ヴォジュラの文体理論を参考に文体・エトス批判によって論敵を貶めると同時に,オネットムたちからの一層の支持を得ようとしたのである。アルノーにまるイエズズ会文体批判は,イエズス会士ヴァヴァザニルによるジャンセニスト文体批判を生むごとになる。二人の論争は文学史上ほとんど知られていないが,17世紀後半の大規模なポール・ロワヤル文体批判に結びついただけでなく,神学論争の読者層を大幅に拡大したパスカルの『プロヴァーンシアル』(1656-1657)にも木きな影響を与えた。つまり,アルノー対ヴァヴァサールの文体論争は,ジャンセニスム神学論争の範囲が純粋な神学・霊性の議論から文学へと広がる大きなきっかけとなったのである。この点は,文体の重要度が二次的にとどまったポール・ロワヤルの霊的著作と異なるが,これは神学論争(ジャンセニスム)と霊的指導(ポール・ロワヤル)の読著層の相違に由来するものである。
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Research Products
(2 results)