2009 Fiscal Year Annual Research Report
フォルジャー図書館所蔵のシェイクスピア・フォリオにおける読者の書き込み
Project/Area Number |
19520266
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Research Institution | Meisei University |
Principal Investigator |
住本 規子 Meisei University, 人文学部, 教授 (10247174)
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Keywords | 英米文学 / シェイクスピア・フォリオ / 読者 / 書き込み / 18世紀 / 版本 / フォルジャー図書館 |
Research Abstract |
フォルジャー・シェイクスピア図書館所蔵のフォリオの書き込みを調査し、とくに18世紀版本との関係を示すデータを蓄積することで、明星サード・フォリオの1冊(MR733, Meisei Shakespeare Collection Database上で全ページ画像を公開中)のような、特定の版本との間に密接な関係が見てとれる事例の相対化をはかろうとする本課題の最終年度では、同図書館にて、ファースト・フォリオ(14冊)、フォース・フォリオ(16冊)のほか、過去2年間に閲覧できなかった、もしくは、追加調査の必要のある、残りのフォリオ(10冊のF2、5冊のF3)を調査した。総じて19世紀の華麗な製本に再製本された堅牢なコピーよりは、製本保存状態の悪いコピー(保護のため、ページを開く角度は60度以内、45度以内という制限下での難しい調査となる)の方に、上述のデータが多く見つかる傾向が見られた。18世紀読者の書き込みが、19世紀の古書マーケットでどのような評価対象となっていたかの証と言えよう。 収集蓄積できたデータは、特定の版本の幕場割りやト書き、本文への校訂や注釈を900頁超のフォリオ本に手入力するタイプの書き込みが、MR733だけの特異な出現ではないことを明確に示すことになった。全書き込みの転写データを採取できるコピーは補助資料となるマイクロフィルムやディジタル画像を入手できたもの(3年間で18冊)に限られるが、その中では、F1-70、F2-24、F3-20がMR733に近い典型的な事例と判明した。 最後に、このような読者行動の位置づけについてであるが、Used Books(2008)の著者W.H.Shermanは、ルネサンス時代の英国では、読者は書物を、自ら積極的に手を加えることでより完成された状態にカスタマイズするべきものと捉えていたと指摘する。版本から情報を落とし込む読者行動け18世紀版カスタマイズ行動であったと考えられよう。
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Research Products
(1 results)