2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19520268
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
丸川 誠司 Waseda University, 教育・総合科学学術院, 准教授 (70339612)
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Keywords | 仏文学 / 美術・美術史 / 哲学 |
Research Abstract |
ヨーロッパの近・現代詩と造形芸術め関係を進める上で、前年度開催されたシンポジウムの成果を下敷きにし、2008年度は、とりわけ現代フランスを代表する詩人のイヴ・ボンヌフォワと、イタリア、ルネサンス期の画家の関係を探った。まずはボンヌフォワばかりか多くの現代詩人に影響を与えているピエロ・デラ・フランチェスカの軌跡を辿るべく、トスカーナを調査。そして教務でベニスに滞在したことより、ボンヌフォワが触れるG.ベリーニ(とビザンチン絵画の関係)、そしてA.マンテニャとの数々の作品に実地に接し、現地の図書館で、古い美術雑誌から重要な論文をコピーなどした。数学者でもあったピエロが完成させた遠近法がいかにルネサンス絵画で幾何学と想像世界の境界にあったか、これをA.シャステル、R.ロンギ、L.マラン、H.ダミッシュ、D.アラスなどの論文を通じて考察し、そしてその現象をボンヌフォワが詩人としてどう捉えているか、詩人としての発想が、美術史家の論考とどう違うかなどを考察。遠近法が「見る」と「言う」の橋渡しの役を担っている、というダミッシュの仮説が重要な手がかりとなる。ベリーニなどについては、当時の西欧にとって「東」の象徴であったビザンチン絵画が西の扉として機能したベニスの代表的画家ベリーニにいかに受容され、これをボンヌフォワが現代の文脈でいかに捉え直そうとしているかを考察した。これらの作業は、ボンヌフォワの絵画論を巡る最近の数多い論考を踏まえた上で行われた。また詩人の絵画論で、フロイト理論の「形象可能性」の果たしうる役割の検討も進められた。最終的には「詩は絵画のごとく」の伝統がルネサンス期の人文主義の中でどのように機能したか、それが近代、現代詩人がどのように受け継がれることになったか、どういう文脈で捉えなおせるかを検討した。
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Research Products
(1 results)