2007 Fiscal Year Annual Research Report
都市の食卓-ドイツ近現代文学から探る飲食儀礼と変容する都市空間
Project/Area Number |
19520277
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Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
柏木 貴久子 Kansai University, 外国語教育研究機構, 准教授 (70411494)
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Keywords | ドイツ文学 / 近現代文学 / 民族学 / 表象文化論 / 比較文化 / 都市社会学 / グローバリゼーション |
Research Abstract |
食という事象を飲食儀礼すなわち文化実践として捉え、これを生活様式の変化の発信源および主要舞台をなす都市空間において考察する本研究において、本年度は19世紀末から20世紀初にかけての世紀転換期についての分析から始めた。まずはThomas Mannの作品とりわけ『ブッデンブローク家の人々』『詐欺師フェーリクス・クルルの告白』を取り上げ、ここに都市の興亡、すなわち中世の伝統的都市から鉄道の発達による移動性を基にした世界的大都市(ミュンヘン、リスボン)への都市文化の移動が見られることを考察した。ハンザ都市リューベックの失墜とミュンヘンの発展は、消化する身体の強弱、大都市パリやフランクフルトの発展および吸引力が食物と食事の場の多様化、さらに世帯変化の兆しは大家族から少人数家族、シングルへの食卓構成員の変化、などにより浮き彫りにされる。本年度はこれを口頭発表と論文発表にまとめた。 文化テーマとしての食の研究については、ドイツ語圏の学際的文化学(ドイツ学、フランス学、哲学)において近年さまざまな著書(とりわけ教授資格論文の多さが顕著であった)が発表されたが、これらの文献を入手することが出来た。本課題にとって重要なのは、とりわけハードとしての都市の内部的変容とソフトとしての飲食儀礼の変化との関連である。都市を舞台にした小説においては外食のシーン、居酒屋やカフェでの振舞いが駆動点として機能していること、19世紀末からの都市部における外食産業の発達はメディアの発展と深く関わること、食べる場としての都市建築も大きな役割を演ずることが認識された。これに関する資料の収集と整理、詳しい分析のための土台をつくるのが、今年度の重要な目的と作業であった。
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