2009 Fiscal Year Annual Research Report
都市の食卓-ドイツ近現代文学から探る飲食儀礼と変容する都市空間
Project/Area Number |
19520277
|
Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
柏木 貴久子 Kansai University, 外国語学部, 准教授 (70411494)
|
Keywords | ドイツ文学 / 近現代文学 / 都市社会学 / 民族学 / 民俗学 |
Research Abstract |
本研究課題は、文化研究としての文学研究という立場から、ドイツ近代文学に描かれた都市における食事象を分析する。19世紀末からの都市の発展は、とりわけその空間に含まれるガストロノミーの発達と密接に結びついており、このことは飲食店の増加と営業拡大、大手ホテルや有名レストランの出現にみることができる。飲食形態の多様化は人々のコミュニケーションの形態、さらには審美的意識や身体感覚にも大きな影響を与える。本年度は5月にアルフレート・デブリーン『ベルリン・アレクサンダー広場』についてドイツで発表を行い、活発な議論の場を持つ事ができた。ドストエフスキーとの比較については慎重に分析上の参考とすることとし、むしろ戦後復興期における都市住民のメンタリティの変化を色濃く作品に反映させているコイン、ヴィッキー・バウム、ケッペンといったドイツ語圏作家を一義的に扱うこと、哲学的考察に関して感覚に関するカント哲学に立ち返ることが重要という見解に従って、文献にあたった。また、オートポイエーシス理論はたしかに都市身体論としては興味深いものであるが、都市の中で飲食行為を行う個々人という視点は常により重要であと言えるので、都市生活者の形成味覚、身体感覚について観念論と現象学の関連をみる必要があるという新たな課題も生じた。 本年度出版したものについて、ひとつは本研究の初期研究(「南ドイツの川と町」)から、もうひとつは儀礼生成における個の重要性についての理論を見直したところから生まれたもの("Volkskundliche Wegmarken um die Jahrhundertwende.")である。都市と食という二つの視点を融合させることから生まれるテーマの広がりを改めて意識することとなった。
|