2008 Fiscal Year Annual Research Report
ステファヌ・マラルメの演劇論と「共和国」の関係についての研究
Project/Area Number |
19520280
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
中畑 寛之 Kobe University, 人文学研究科, 准教授 (70362754)
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Keywords | ステファヌ・マラルメ / ワーグナー / フランス第三共和制 / 19世紀末 / 演劇と国家 |
Research Abstract |
本年度は9月にパリのジャック・ドゥーセ文学図書館において、マラルメが『パージュ』(1891年)および『詩と散文』(93年)をそれぞれ出版するにあたって作成した台紙貼付け見本(maquette)の現物を手に取り、その作業の現場を確認した。とくに86年から87年にかけて書かれた劇評「演劇に関する覚え書」がその二つの著作においていかに編集・統合・分解されていくのかを、切り貼りされた校正刷・雑誌初出のテクスト、またマラルメ自筆の書込み等から追うことができた。これらマケットに関しては残りの研究期間中に繰り返し検討し、最終的には詳細な研究資料を作成したいと考えている。 発表論文は2本。「私は未知なるものを待っている-マラルメの『エロディアード』上演をめざして(2)」、および「思考における『夢のような正しさ』について-ワーグナーの『挑戦』に応えるマラルメ」である。ワーグナー論は前年度学会で発表したものに大幅に手を加えた。演劇というものの社会的・宗教的役割を意識させた重要な存在としてワーグナーを位置づけつつ、彼の神話の扱い方を批判する詩人の手つきから、マラルメ的共同体がいかなるものであり得るかという問いへと論を進めることができた。今年度は結局、ワーグナーとバレエ論を中心に論をまとめることになったが、研究環境の変化に伴う雑事によって、あまり研究が進まなかったことも事実である。3年目となる今年度以降、マラルメが夢想する「ドラマ」のあり方を念頭に置き、同時代風俗劇を扱った彼の劇評の考察に着手したい。 本年度も1880年代にパリで上演された演劇情報のデータ・べース化を継続したが、膨大な、しかも無味乾燥な情報になりかねないその資料をいかに有効活用できるかたちで提供し得るのか。この点に関し、ウェブ上での公開をめざして、サイト構成の方向を明確に決定する必要があるだろう。
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