2010 Fiscal Year Annual Research Report
ステファヌ・マラルメの演劇論と「共和国」の関係についての研究
Project/Area Number |
19520280
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
中畑 寛之 神戸大学, 人文学研究科, 准教授 (70362754)
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Keywords | ステファヌ・マラルメ / フランス第三共和制 / 演劇と国家 / 19世紀末 / データベース |
Research Abstract |
パリのジャック・ドゥーセ文学図書館での資料閲覧・調査により、マラルメが手ずから作成した『台紙貼付け見本(maquette)』それぞれの生成批評版作成を進めた。『詩と散文』のマケットに関しては生成批評版を完成させることができた。予想以上にさまざまな雑誌からの切抜きによって構成されており、それらの特定には至らなかったが、演劇論については詩人によるテクスト(再)編成の手つきが確認でき有益であった。『漆塗りの抽出し』『パージュ』に関してはまだ不十分な箇所が多く、未完成であるが、今後も手を入れていきたい。マラルメが観た芝居に関する上演データについては、ひとまず、その概要と他の批評家たち(Stoullig、Saint-Mor、Raoul Tocheなど)によるテクストを《Spectacles vus parle poete》としてHP上で公開した。それらの劇評と劇作品それ自体とを併読することで、同時代における詩人のまなざしの特異性、その目指す地点が実証的に確認できるようになったはずである。これからも文献資料の補足を続け、同時代演劇とマラルメの関係を見定めていきたい。 本研究から派生する形でマラルメとジャリの関係を扱った論文を書き、これまで等閑視されてきた両者の文学的系譜について、『詩と散文』の影響を仮定しつつ考察を試みた。また「声と身体の場-ベケット、マラルメ、ジャリ」と題した発表では、マラルメの演劇論の立場からベケット、ジャリの仕事を検討すると同時に、彼らの試みを通過したまなざしでもって改めてマラルメによる演劇の可能性を問い直してみた。
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