2007 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19520287
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
佐竹 保子 Tohoku University, 大学院・文学研究科, 教授 (20170714)
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Keywords | 中国文学 / 魏晋六朝 / 文学性 / 宗教性 / 謝霊運 / 詩賦 / 道教 / 仏教 |
Research Abstract |
本研究の題目のうち「美」はおもに文学性を、「聖性」は宗教性を指す。両者のうちとくに前者の「美」=文学性は曖昧な観念であるため、本研究では敢えてその内実を、(1)審美観、(2)修辞、(3)詩語、の三点に絞り、それらを集中的に検討することにした。 報告者はかつて2005年に、本研究が対象とする時代における代表的な詩人である孫綽と謝霊運を取り上げ、両者の作品が(2)修辞の上で連続性を持つことを指摘したが、今回はその基礎の上に立って、(2)修辞上の連続性にもかかわらず、なお顕著に認められる両者における(1)審美観の断絶性について検討した。その結果、両者の有する宗教性の相違が、その審美観の相違に帰結している様相を明らかにし、一本の論文にまとめた。孫綽の審美観は、当時の道教文献に見られる審美観に共通し、謝霊運のそれは、百数十年ほど前の招隠詩に淵源しつつも、謝道蘊という謝家の女流詩人を経て、当時の中国仏教の僧侶たちに受け継がれていく審美観に共通している。しかしそれは、当時までの翻訳仏典に見られる審美観とは異質であり、中国仏教という特殊限定的な宗教性に関わっている。(3)詩語については、この時期の山水詩に特徴的にあらわれる「賞」を取り上げ、先行研究を参考にしつつも、「賞」の出現する最初期の文献から検討し直した。その結果、この時期の鑑賞の意味の「賞」は、初期文献にある「功」に対する褒美としての「賞」と、コア・イメージの構造としてはほぼ同じであることを明らかにし、すなわち「賞」が、聖なる山水と詩人との相互交流としての内実を持つことを示し、(上)(下)に分けた二本の論文にまとめた。
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