2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19520289
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
菅野 智明 University of Tsukuba, 大学院・人間総合科学研究科, 准教授 (90272088)
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Keywords | 書道史 / 書論 / 文献学 / 中国近代史 |
Research Abstract |
本研究は、従来知られてこなかった近代中国書論を、各図書館・博物館の調査によって発掘し、文献学的な検討を加え、影印もしくは翻刻によって公開し、向後の書論研究の礎を築こうとするものである。本年度は、上海図書館、浙江図書館のご協力を得、無名氏輯『陶斎蔵碑跋尾』、方若『校碑随筆』(〓徳彝眉批本)、陶濬宣『稷山文存』(以上、上海図書館蔵)、楊宝〓『観古碑法』、同『古碑古拓説明』(以上、浙江図書館蔵)を調査した。上海図書館蔵の上記文献は、昨年度からの継続調査であったが、これによって『陶斎蔵碑跋尾』の全容が把握できた。これにより、同著の文献学的・書論史的検討を加えた結果、同著が、端方所蔵碑拓に附載する題跋著録であることが明らかとなり、題跋著録の歴史からしても稀有な先行例であることを指摘した(第1回中国近現代文化研究会大会2009年8月大妻女子大学)。また、『稷山文存』については、書誌的な検討を加えるとともに、特に所収論文の一つ「宋元祐秘閣本晋唐小楷帖跋」について、陶の代表的な書論である『稷山論書絶句』との比較から考察した。その結果、この「小楷帖跋」は『論書絶句』を導く貴重な先駆けであり、『論書絶句』で展開する所謂「互証論」については、むしろこの「小楷帖跋」のほうが、近代の書論史を見渡しても、貴重な視点を投げかけていることが明らかとなった(『書芸術研究』3号2010年3月)。
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Research Products
(4 results)