2008 Fiscal Year Final Research Report
Quanxiang Pinghua through restoraition of Qian-Hanshu Pinghuapart1, part2
Project/Area Number |
19520292
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Single-year Grants |
Section | 一般 |
Research Field |
Literatures/Literary theories in other countries and areas
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Research Institution | Saitama University |
Principal Investigator |
OTSUKA Hidetaka Saitama University, 教養学部, 教授 (30126007)
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Project Period (FY) |
2007 – 2008
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Keywords | 前漢書平話続集 / 全漢志伝 / 両漢開国中興伝誌 / 漢書故事大全 / 輯校本 |
Research Abstract |
本研究は、内閣文庫に所蔵され、上図下文の形式により、元の至治年間に福建の書肆虞氏から出版されたと推定される、一般に「全相平話五種」と称される一連のテキストのうち、『前漢書平話続集』上中下三巻をとりあげ、これと、その後裔とみなせ、やはり上図下文の形式により福建の書肆から刊行された、ともに明の万暦刊本が名古屋の蓬左文庫に蔵される、『両漢開国中興伝誌』ならびに『全漢志伝』を比較対照させ、「全相平話」から「伝誌」・「志伝」への変遷の過程を明らかにし、併せて、現在は失われた、「続集」に先立つ『前漢書平話』の「前・後集」部分と、「続集」に続くと推定される「別集」、さらには『全相平話後漢書』のあらましを明らかにすることを目的としている。 上記目的を達成するため、まずに『前漢書平話続集』上中下三巻とこれに対応する『両漢開国中興伝誌』ならびに『全漢志伝』を対照させ、三者を一覧できる輯校本を作成し、まずその上巻部分を試行本として発表した。その後、上中下三巻全体につき輯校本を作成し、これを冊子の形式で公表した。輯校本作成の手順は下記の通りである。 (1) 者の木版影印本をスキャナーでパソコンに取り込み、データベースを作成した。ただし、すべて漢字の文献であり、なおかつ通俗文学作品には普遍的に存在する多数の俗字の問題があり、日本国内で作成されたソフトを使用しても解読率があがらないことが予想されたため、データベースの作成については中国の業者に依頼することにした。 (2) うして作成したデータベースであったが、資料が原本をそのまま写真撮影したものであったため、本ののどにあたる部分が十分判読できず、その部分の解読率が上がらなかったため、自ら名古屋の蓬左文庫におもむき、原本により目睹調査し、自身入力することが必要となった。 (3) うして解読率を上げたデータベース三種を同一のページに対照してならべ、三者それぞれに筆者において句読点を加えるとともに、原本の誤字脱字、通仮字等につき厳密な校正を加えた。 (4) これを当時非常勤講師をしていた東大中文の大学院の授業のテキストとして使用し、院生諸君と解読を行い、その精度を上げることに努めるとともに、三者の対応関係についての認識を深めた。 かくして、『前漢書平話続集』から『両漢開国中興伝誌』、『前漢書平話続集』から『全漢志伝』への改変の傾向、ならびに『全漢志伝』と『両漢開
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国中興伝誌』の相違のよってきたるゆえんを考察し、両者が『前漢書平話続集』を祖とする親子の関係にはなく、兄弟、あるいはいとこの関係にあることを明らかにすることができた。さらに、もうひとつの目的であった、続集に先行ないし引き続く部分の「全相平話」の様相についても、対応する『両漢開国中興伝誌』と『全漢志伝』の分量、ならびに両者の改変の傾向に照らし、先行する部分については、これまで斯界のおおかたの共通認識であった正集一集(正続の二集)ではなく、『前漢書平話前・後集』二集分であった蓋然性が高いことを明らかにした(前後続の三集)。また、現存する両者の万暦刊本を書誌学の立場から厳密に検討し、両者それぞれについて、現存の形で出版されるに至るまでに経た複数の出版の経緯につき、具体的に論証した。 筆者の本研究とほぼ同時に、信州大学の氏岡真士氏が、海外に遺留している漢籍の調査において発見された、スペインのエスコリアル修道院所蔵の『漢書故事大全』による研究を発表された。『漢書故事大全』は残本であり、そのごく一部が現存しているにすぎないが、その現存している後漢部分を『両漢開国中興伝誌』・『全漢志伝』の対応する部分と対照させると、三者が極めて類似しており、共通の祖本があったことが強く推定された。筆者はそれこそがかつて存在したはずの『全相平話後漢書』ではないかと考え、この作業仮説の正否を検証する作業にとりかかった。作業は先の『前漢書平話続集』と『両漢開国中興伝誌』・『全漢志伝』の輯校本作成と同様に進められた。すなわち、『両漢開国中興伝誌』・『全漢志伝』の後漢部分のデータベースを作成し、この対応する部分と『漢書故事大全』の残存部分を対照させ、同一ページに一覧できる輯校本とし、それに句読・校正などを加えたテキストを作成した。この輯校本作成の過程とその間の考察を通じ、先に推定した祖本は確かに存在しており、なおかつそれは『全相平話後漢書』とみなしてさしつかえない性格の文献であって、上記三文献はいずれもそれをそれぞれの方針により改変した作品である可能性が高いことを確認した。 最後に『前漢書平話続集』に対応する部分に先立つ『両漢開国中興伝誌』・『全漢志伝』のデータベースを作成し、これを並べた輯校本とし、これまでに得た両者の『前漢書平話続集』からの改変傾向に照らし、ありうべき『前漢書平話前・後集』の復元を同一ページに試みた。だが、苦心惨憺の復元作業の結果、個々のエピソードについては高い蓋然性で『前漢書平話前後集』における存否を指摘することは可能と判明したが、テキストそのものについては、おおかたの要求を満足させるレベルでの復元は困難なことがわかった。また続集に続く「別集」についても、その存否につき確言することは難しいことがわかった。 Less
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Research Products
(7 results)