2010 Fiscal Year Annual Research Report
日本現存朝鮮古刊本の調査とその語学的・書誌学的研究
Project/Area Number |
19520297
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Research Institution | Reitaku University |
Principal Investigator |
藤本 幸夫 麗澤大学, 言語教育研究科, 教授 (70093458)
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Keywords | 朝鮮本 / 文獻学 / 中國本 / 活字本 / 木版本 / 刻手名 |
Research Abstract |
本人は40年餘間日本全國及び臺灣故宮博物院・大英圖書館に現存する朝鮮古刊本(含鈔本) を調査・研究して来た。四年前に『日本現存朝鮮本研究 集部』を刊行し、現在經・史・子の三部の調査及び研究を主に行っている。 本年度は天理圖書館・京都大學圖書館・大阪府立圖書館・東洋文庫・國會圖書館・東京大學圖書館で史・子部の調査・研究を行い、冊数にして約700冊の調査を終え、又刻手名も蒐集し得た。天理圖書館及び東洋文庫は日本有数の朝鮮本所蔵機関であり、前者の史部は半ばの調査を完了したが、韓國にもない善本が多く含まれる。後者の史部は三分の二を終えた。又京都大學では天下の孤本である『金石集帖』(本集) 218冊の調査を数年かけて終了した。18世紀後半に成った拓本集で、現在すでに摩耗若しくは喪失した碑石の拓本を多く含み、極めて貴重である。本年度には調査済みの大英圖書館及びフランス・ギメ東洋美術館所蔵の朝鮮本を、日本現存本をも考慮に入れつつ報告した。前者は同館のキュレイター二名の協力を得た悉皆調査で、通常外國人だけの調査では成し得ない内容を含んでいる。両館蔵書に樹する専門的論文は筆者のものが初めてで、特に韓国の学者からは所蔵書の内容が明らかになり、大きな評價を得ている。島根縣立圖書館の講演會記録集は、日本に與えた朝鮮出版文化の影響について述べたものである。日本は古代はもとより、中世・江戸時代に至るまで大きく朝鮮の影響を受けており、とりわけ江戸初期の出版興隆期においては、朝鮮本が藍本として用いられた。江戸期の學問諸般に及ぼした影響の大きさについて、具体體的な例をあげながら、論述した。 更来年度に『日本現存朝鮮本研究史部』を刊行すべく、現在鋭意執筆及び入力を行っている。
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