2007 Fiscal Year Annual Research Report
中国語文化圏における厨川白村著作の受容の再燃現象についての研究
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19520309
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Research Institution | Aichi Prefectural University |
Principal Investigator |
工藤 貴正 Aichi Prefectural University, 外国語学部, 教授 (80205096)
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Keywords | 厨川白村現象 / 大陸中国・香港 / 台湾 / 民国文壇 / 文芸思想 / 文芸思潮 / 現代性 / 生命主義 |
Research Abstract |
昨年度は、戦後大陸中国における厨川白村受容の現状を把握するために、上海図書館での資料集に務め、次のような重要な資料を入手した。(1)温儒敏「魯迅前期美学思想与厨川白村」(『北京大学学報』哲学社会科学版、1981年5期)(2)劉柏青「魯迅与厨川白村」(『日本文学』長春・吉林大学、1984年1期)(3)許懐中「魯迅与厨川白村的『苦悶的象徴』及其他」(『魯迅研究』魯迅研究学会、中国社会科学出版社、1984年4期総10期)(4)趙憲章「文芸社会学和文芸心理学的合流与厨川白村」(『南京大学学報』哲学・人文・社会科学、1987年3期)(5)王向遠「厨川白村与中国現代文芸理論」(『文芸理論研究』華東師範大学中文系、中国文芸理論学会1998年2期)(6)王向遠「胡風与厨川白村」(『文芸理論研究』華東師範大学中文系、中国文芸理論学会、1999年2期)(7)黄徳志「厨川白村与中国新文学」(『文芸理論研究』華東師範大学中文系、中国文芸理論学会、2000年2期)(8)黄徳志、沈玲「魯迅与厨川自村」(『魯迅研究月刊』北京魯迅博物館、総232期、2000年10期)(9)王成「『苦悶的象徴』在中国的翻訳与伝播」(『日語学習与研究』2002年3月)(10)王鉄鈞「従審美取向看厨川白村文芸観的価値認同」(『山西大学学報』28巻5期、哲学社会科学版、2005年9月) その結果、80年代は「走向世界(世界に向かって)」の標語のもとに、比較文学研究を中心に魯迅の翻訳『苦悶的象徴』『出了象牙之塔』などが中国20-30年代文学における文芸論の基礎となっている研究であることが解明された。90年代は呉中恭・呉立昌『中国現代主義尋踪:1900-1949』(学林出版社、1995年12月)を典型とするように、文芸流派・文芸思潮のなかで厨川白村著作を位置づけている。更に、2000年代からは王文宏『厨川白村文芸思想研究』(吉林人民出版社、2002年12月)に代表されるように、「現代性(modernity)」「全球化(globalization)」をキーワードに、厨川白村の著作のうち『苦悶的象徴』『近代文学十講』に描く「情緒主観」「時代」「人間苦」「生命力」を「文芸思想」というタームを用いて分析する研究であることが認められる。
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