2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19520315
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Research Institution | Meisei University |
Principal Investigator |
加藤 めぐみ Meisei University, 日本文化学部, 教授 (30247168)
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Keywords | 英語圏文学 / オーストラリア文学 / 太平洋戦争 / 日豪関係 / 比較文学 |
Research Abstract |
本研究は、オーストラリア(以下、適宜豪)文学において、太平洋戦争の記憶がどのように表象されているかを調査することにより、太平洋戦争についての豪社会の公的記憶の創造の過程と文学の関与、また日本の記憶との非対称性及び文学表象における違いを明らかにすることを目的とした。 平成19年の研究を基に、学会(“Home and Away"Colloquium, Canberra、10月)で“Narrating the Other at Warg"と題し、豪文学にみる太平洋戦争と日本描写についての概観及びその問題点を提起する発表を行った。この際の豪研究者との討論や新たな視点提供により、その後の研究に発展的方向を得ることができた。研究終了の年として成果を取りまとめるため、8月にキャンベラ(国立図書館、Australian Defence Force Academy,戦争記念館にて資料収集及び研究打ち合わせを行った。 これらの資料を分析・考察した結果、オーストラリアの地理的状況やそれに伴う社会背景、すなわち社会の多文化化の度合いや日本による実際の攻撃の有無などが関係し、文学に見られる戦争の記憶と敵である日本及び「他者」としての日本人の描写に、作品が書かれた年代と場所による違いが認められた。だが現在の豪社会の公的記憶はおしなべてナショナリスティックな傾向が強い。一方で21世紀前後からの現代豪文学はそこからやや逸脱しているように考えられる。このような差異について考察した論考を『明星大学研究紀要(21年3月)に掲載し、また関連論考を執筆中である。(一部6月刊行予定)。
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